後輩が俺に惚れない【五条悟】

#42 ページ44

五条「お前のどこが駄目だったんだよ

あの子供が死んだのが、なんで」




なんで


任務きいた瞬間飛び出して

最高速度で現場に向かって

それでも間に合わなかっただけのお前のせいなんだよ



何も関係ねえだろ





『私のせいじゃなきゃ誰のせいなんですか』





まるで俺の方がおかしいとでも言うように

そいつが吹き出すように声を震わせる





五条「誰のせい…とかあるかしらねえけど

少なくともお前のせいじゃねえだろ」



『私のせいです』



五条「は！？だから！どこにその根拠が、」



『私のせいなんですよ！！』



五条「！」





怒声に似た大声が医務室に響き渡って

あまりにも耳に届くその声に俺の体は固まった


そして


俺の体を固まらせたのはそれだけじゃなかった





『私のせいなんですよ…
私のせいじゃなきゃ…！

あの子は…っ、残された子は

怒りも悲しみも
いったい誰に向ければいいんですか！？』



五条「…！」





俺の双眼にうつる、溢れては零れ落ちる雫


その雫の理由なんて聞かなくてもわかる



それはただの

そいつの優しさのかたまりだった





『あの子…泣き叫んでたんです

気を失うまで
おねぇちゃん、おねぇちゃん、って
何度も呼んで…！

それなのに…どれだけ呼んだって
あの子はもう"おねぇちゃん"に会えない…っ』



五条「……」



『抱き締めてももらえないし

喧嘩もしてもらえない

一緒に出かけることも

テレビをみることも

バカな話で笑い転げることも

趣味を語り合うこともできない』





月明かりが反射する雫は

ぽたぽたとシーツにシミをつくって
とどまるところをしらない





『私に向けられないなら
あの子は何を恨めばいいんですか…！』



五条「自分だろ」



『っ！』





早すぎる俺の返答に

そいつは涙に濡れた顔をあげた





五条「そいつらがどういう経緯でそこに入ったのかは知らねえけど

もし誰かを恨むなら、それは自分だ

あのときこうすればよかった
ああすればよかった
あんなことしなければ

そんなことばっか考える」





実際俺は

そういう人間ばっかみてきた


呪術界じゃ人が死ぬなんて珍しいことじゃない

仲間が目の前で死ぬことだってある


それで残されたやつらは決まって
自分のことを責めていた




だからたぶん

あの子供も一生自分を恨んで生きていく


たとえ人目にうつる自分が悪くなくたって


本人にとっちゃ
理由や原因なんてそこかしこにあるんだから

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