後輩が俺に惚れない【五条悟】

#30 ページ31

NOside




時は過ぎ


梅雨も明けて

蝉の声が高専中に響き渡るようになった頃





『あづぃ…』



伊地知「同感です…」





二人しかいない一年の教室で

ぐったりした声が二つ発せられた





『更衣期間っていつからだっけ…

それかクーラーつけていい期間…』



伊地知「どちらも１、２週間は先だったかと…」





その返事にAの顔に絶望の色が浮かぶ





『鬼だ…！鬼畜だ…！
誰！？そんな規則きめたの！！

…もういいかな更衣期間とか無視しても

たぶん誰も怒らないだろうし』



伊地知「まあそうかもしれませんが…

七海さんならしないと思いますよ」



『ぐっ…それ、は…そっか
我慢しよ…』



伊地知「……」



『……』





教室にまた静寂がもどる


伊地知もAも黒板の方を眺めたまましばらく動かなかった





伊地知「…………上着は脱いでもよいのでは…？」



『ﾊｯ、たしかに…！』





ﾑ"ｰ、ﾑ"ｰ





いそいそと動くAの隣で


突如伊地知のポケットに入った携帯が震えた




二人とも特に気にしなかったが


バイブ音の長さで電話であることに気がついた伊地知は


誰からの着信かも確認しないで

慌てて電話に出てしまった




それを直後、後悔することになる。





？《出るの遅ぇよ！！
最低でも３コールだろ！！》



伊地知「ﾋｨ!!五条さん！？」



『！』





伊地知に電話をかけてきたのは五条だった


Aの隣で伊地知が顔を真っ青にする





伊地知「な、何事d」



五条《いま中庭の花壇のとこで水遊びしてんだけど

水風船ないから麓のコンビニまで買ってきて》



伊地知「エッ！？」



五条《５分でこいよ！》



伊地知「５分！？ちょっと待____切れた…」





画面には"通話終了"の文字



伊地知は現実を受け止めきれずに呆然とした





『五条先輩なんて？任務？』



伊地知「まあ…ある意味…

水風船をコンビニまで５分で買いにいってこいと…」



『水風船…？水遊びしてるの！？』



伊地知「そうみたいです…

５分って…走ったとしてもコンビニにつけるかどうか…」





伊地知が相変わらずの五条の無茶ぶりにうんざりしながら教室を出ようとする


それをAが引き留めた





『まって伊地知くん！』



伊地知「…？」



『私先週買ったよ！！水風船！！
水遊びしたいなーと思って！！

寮に新品があるよ！』



伊地知「………………………………神ですか……？」

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