ep3.片言折獄 3/3 ページ7
そのまま男を見つめていると、しばらく間を明けて、男がこちらを向いて言った。
「……まあ、それは置いといて。生きる意味、よければ私と一緒に探しませんか。
君はまだ幼い。そして、君の人生はまだまだ長い。これから探していけばいいんです。
今は……そうですね、私と一緒に生きること、とでもしておいてください。
私もひとりで、君もひとりだった。
でも、今日からはふたりです。どうでしょう?」
男が再び笑顔を向けそういった。
自分には突拍子もないことで、思わず言葉を失う。
胸のあたりがざわざわする。こんなのは初めてだった。落ち着けずにぽりぽりと頭を掻く。
「……ひとりは、寂しいからね。見ず知らずのあんたのこと、よくわからないし、怪しいやつだとも思うけど、けど。助けて貰った恩もある。
……うん。あんたと、一緒に生きること。悪くない、かも。」
そうだ、ひとりは寂しい。なにもわからなくても、それだけは、今まで生きてきて知っているから。
最後のほうはほぼ聞こえちゃいないかもしれない。尻すぼみになってしまっていた。
それでも男の耳には届いていたのだろう。
「ふふっ……嬉しいです。」
と笑う男。どこか居心地悪くなりながらも、この空気感を好ましい、と思っている自分がいる。
「実は、昔からの夢でね。私塾を開こうと思っているんです。」
「じゅく……?」
「松下村塾、と言います。」
男は続ける。
「しょーか、そんじゅく……」
「こういう字を書きます。
手習いを教えたり、剣を教えたり。どうです?君も。」
男が木の棒を拾い、地面に字を綴る。学がないので読めないが。
きっと、この男の言う、しょーかそんじゅくとやらで、それもわかるようになれるんだろう、と思った。
「うん、あんたと生きることが今日から生きる意味だから。しょーかそんじゅくで学ぶよ。」
そう返事をする。
「ふふ、そうですか。それは喜ばしい。
……今はまだ、君ひとりだけですがこれからきっと、仲間ができますからね」
「そりゃあいいや、」
そしたら、寂しくないね。
と男に向かい、人知れず心で溢した。
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(今日からふたり)
拾い、拾われるふたり。
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先生との夢小説みたいになってしまってる……(笑)
ちなみに時間軸は原作でいう、松陽先生が奈落を抜けて、朧と離別後〜〜銀さんと出会う前位を想定しています。
★ep4.きみのその色は 1/1→←ep3.片言折獄 2/3
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作者名:きびもち | 作者ホームページ:https://twitter.com/c6h12o6_kbmt
作成日時:2021年5月21日 19時