ep12.教育は味を占めて 3/5 ページ39
「実戦ではいいのですが、道場では試合の規則に従ってもらわないとなりませんからねえ……」
「はぁい」
と気の抜けた返事をして、空を眺める。
「まぁ、俺とやるときはいーけどよ。全身全霊で勝負挑まれるのは悪かねー」
ニヤッと笑う銀時に少しだけ救われたような気がした。
「あれ、忘れ物か?」
ふと縁側を見れば教本が一冊置かれているのが目に入る。近寄って表と裏を見れば先ほど帰ったばかりの子のものであるようだった。追いかけたらまだ追いつく距離であろう。
ちょっとコレ、届けてくるわ。と2人に声をかけて走り出すと背中の向こうから、いってらっしゃいと松陽の声が聞こえた。
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自分の予想通り、お目当ての持ち主は松下村塾からまだそう遠くない道を何人かで横並びになって進んでいた。
それにしても、なんだか身なりの整った見慣れない奴らもいるが。少しだけ嫌な予感がしつつも、距離を詰める。
「お前らか、松下村塾とかいう怪しげな寺子屋に通っているというガキどもは」
「大した家柄でもないのに学びなど不必要であろう」
私よりも頭が一つか二つくらい大きい背丈の少年らが下卑た表情を浮かべながら、突っかかっているようだった。まあそんなことどうでもいいが。めんどくさそうな奴らに絡まれている奴らに話しかけなければならないことのほうが正直めんどくさいな、と少しだけ思いつつ。
「おーい、縁側に忘れものしてたぞ」
大切な教本だろう、と空気を読まない発言をあえてする。えっこいつ、このタイミングで話しかけてくる?、と言わんばかりに両者共々の視線が私に注がれている。
あ、ありがとう?と困惑気味の相手が教本を受けとったのを見て、
「じゃ、自分はこれで」
邪魔したね、と言い残して踵を返し帰路に着く。
ぐしゃり、と耳障りな音が集団のほうから鳴ったのが聞こえた。
「フンッこんなもの、どうせ碌な教えなど書かれていないだろう!!」
振り返れば、集団でもそこそこ偉そうな態度を取っていた男が松下村塾の教本を二度、三度と踏みつけるのが視界に入った。
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作者名:きびもち | 作者ホームページ:https://twitter.com/c6h12o6_kbmt
作成日時:2021年5月21日 19時