ep2. 邂逅 2/2 ページ4
「……あんたが、ここまで運んでくれたの……?」
「そうですね、旅路を歩いているとき偶然近くを通りかかったので。」
「ふぅん……、てまかけて悪かったね……。」
「かまいませんよ。私は吉田松陽といいます。旅をしています。きみは?」
「……名前も氏もわからない。年も、合ってるかわからない。かぞくは……多分もうどこにもいないよ。物心つくまえに村が戦争にまきこまれたんだって、」
別に正直に言わずともいいのだろうが、なぜだかわからないがこの男の前では偽れずに昔、少しだけ一緒だった法師さま伝いできいた話をする。
「そうですか……攘夷戦争に……。ということは君は戦争孤児なのですね。」
「そーそ。せんそーこじ。」
なんとも心情の読めない表情で男は話を聞いていた。
「そういえば、私のことはもう警戒しなくてよいのですか?」
さっきまで両腕で握りしめていた刀を話しているうちに横に置いたのをみた男がそう尋ねてきた。
「あんたきっと、すごい強いんでしょ。だって、もし弱いなら刀を遠くに離さずにしておくなんてこと、しないでしょ。」
もしくは、なめられているか。まあ両方あるだろう。
「……なんというか、君は年齢の割に聡いですね。今まで過ごしてきた環境に適応すべく、身に着けざるを得なかった能力なのでしょうが。ですが、年上にはあんたなどとは言ってはいけませんよ。」
という発言とともに額に走る衝撃。思わず目じりに水がたまる。
「いった!!? 手負いのわっぱにしていい所行じゃないやい……。」
「さっきから動くなといって言っているのに、きみは全く私のお願いを聞いてくれないので。起き上がろうとしているのわかっていますかね。」
「だからってさらに傷を増やすことないだろ……デショウ。」
めちゃくちゃに痛い。ぜったい腫れるよコレ。自分の手で額を撫でつける。
「それから、こういう時はありがとう、と言われたほうが嬉しいものですよ。」
「……ありがと……。」
小声でそう呟くと穏やかな笑顔で笑う男。
これが、吉田松陽との出逢いだった。
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(ヨシダショーヨー、今までみたことないタイプのおとなだ)
(まあ、そもそもおとなとの関わりなんてもっちゃいないんだけど)
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作者名:きびもち | 作者ホームページ:https://twitter.com/c6h12o6_kbmt
作成日時:2021年5月21日 19時