ep8.着地点を測る 1/4 ページ25
「さて、そろそろご飯にでもしましょうかね」
と立ち上がる松陽に頷いて、静かに眠っている銀時を見る。
「ふふ、こんなところでいつまでも寝ていては風邪をひきますよ」
と溢しながら銀時に歩み寄り、銀色の頭に手を伸ばそうとする松陽。
おい、松陽、それはまだマズいんじゃないか。と言いかけたその瞬間。
ぱちり、と開いた銀時の赤い瞳は鋭い殺気を放った。
真っ赤な液体が宙を飛ぶのをみて、悪い予感が的中した、と内心項垂れる。
不規則に飛んだ血は畳に、床に、柱にたらりと付着した。
松陽は口を開けて驚いているし、銀時はやってしまった、と言わんばかりの表情。
「いてて……」
腕を見つめる松陽。
「……包帯持ってくるから、ちょっと待ってて。
銀時も、刀鞘に納めて」
「そんなに深くないので、舐めておけば治りそうです」
「舐めときゃ治る傷と、治らない傷の区別もつかない奴は黙っとけー」
「……弟子が冷たいです……」
しくしく、と泣き真似をする松陽に呆れる。
軽口叩けるなら、大丈夫だな。などとは言ってみたが、腕からの血はやはり止まることはなくポタポタと床に落ち続けている。
どこが深くないだよ。と思いながら、2人をその場に残して、救急箱を取りに行くために背中を向けた。
銀時は悪くない。そして、松陽も悪くない。
どちらも悪くないのだ。ただ、タイミングが悪かった。
銀時のあの行動は、今までの環境下で作り上げられたもので、生きるためには必要なものだ。
だから、どちらかといえば、そう。
どちらかといえば、松陽が迂闊だった……と思う。
が、やっぱりどちらを責めるのも間違っているだろうなと思う。
そんなことを考えながら、救急箱を抱えたところで、処置をするなら血を拭うための手ぬぐいも必要かと思い立ち、手ぬぐいを水場で濡らし絞ってから二人の場所へ戻った。
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作者名:きびもち | 作者ホームページ:https://twitter.com/c6h12o6_kbmt
作成日時:2021年5月21日 19時