ep7.翳りは干涸らびて考える 5/7 ページ22
お先にもらったよ。と風呂から出て居間に戻れば、縁側の近くの襖に背を預けて刀を大事そうに抱えて寝ている銀時と、机に向かう松陽がいた。
「きみが上がったら、ご飯にしようと思ったんですがね。どうやら寝てしまったみたいで」
「まあしばらくしたら起きるだろうし、それからでいいんじゃないかな」
畳の上に自分も座る。
それに、話も聞きたいし。と言えば松陽は筆を置いて、冊子を閉じてこちらを向いて話始めた。
「銀時は、死臭の漂う戦場にいました」
それを聞いて、心内でだろうな、と思う。
松陽は続ける。
「今日行った街で、戦場跡に屍を食らう鬼が出る、と聞いて居ても立っても居られなくて……。
童一人で懸命に生きる姿が、君と重なって。気づいたら、連れ帰っていました。
ああ、別に無理やりではないですからね……?」
言葉を選ぶように話す松陽。
ひとりで生きてきた男の子か。そりゃあ松陽は嫌でも私と銀時が重なるだろう。
私はどうしようもないときは、追い剥ぎも驚くくらいの悪事をしでかしていたこともあったけど、あの子はどうなんだろうとふと思う。
死んだように生きていたあの頃の己の感性。比べるモノサシも持ち合わせるはおろか、知りえなかったあの頃。
善も悪もわかろうとしなかったあの頃。生きているのに死んでいたあの頃。
「————、名前?」
ぐるぐると頭で考えていれば名前を呼ばれているのに気づく。聞くのが疎かになっていた。
「ッ、ああ、ごめん」
邪推だ。別にこんなこと、銀時に聞くことはしない。どうやって生きてきたなんて、私も全てを松陽に言ったわけじゃない。
そんなのを知ったところでなんにもならない。大事なのは、今後の身の振るい方だ。どう生きていくかだろう。
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作者名:きびもち | 作者ホームページ:https://twitter.com/c6h12o6_kbmt
作成日時:2021年5月21日 19時