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60匹 ページ14

時計の秒針の音、弁当箱の底を箸が掠める音、西洋簡易食(サンドウィッチ)を包んでいたアルミホイルを剥がす音、昼食を咀嚼する音。

この会議室にいて聞こえるのは精々、先刻挙げたその四つ。

そして一番騒がしい音を立てているのは間違いなく俺の手元にあるアルミホイルだ。

一緒に飯を食べようと誘った中島敦は、向かいの席でチラチラと俺に視線を寄越しながら何か言うでもなく昼食を食べている。

その隣で自分の弁当だけを見つめて黙々と食べ続ける和服の少女。

中島敦が俺を食事に誘ったのは、一緒に食事をしながら会話をして新人同士の親睦を深めよう、という意図があったんだろうが、この少女の目的は判らない。

中島敦の方も、誘ったのなら話しかけてくるなりなんなりすればいいものを、ヘタレ故か顔を上げ下げして瞬きを沢山して目を左右に忙しなく動かして。

これではまるで、俺が中島敦を委縮させているみたいじゃねえか。

俺から話し掛けるのを待っているのかも知れねぇが、俺は此奴らに用事はないから話し掛けることはしない。


此処で飯を食い始めてそろそろ十五分が経つだろう。

俺は箱から最後の西洋簡易食(サンドウィッチ)を取り出し、ガサガサと煩い音を立てながらアルミホイルを剥がす。

これを食い終わったらさっさとここから退場して上の階にでも行こう。

そう思いながら持つ部分だけ残して剥いた西洋簡易食(サンドウィッチ)に齧り付く。

そして漸く気付いた。

レタスとハムを挟んだだけの此れは、何時もなら気分が悪くなるような臭いを発するのに何故か今日はそれがない。

そういえば目の前で食べているこの二人の弁当箱からも、嫌な臭いは漂ってこない。

冷蔵庫に入れていたからか?

学校との違いがあるとすれば冷蔵庫に保管して食べる直前に温めていたことくらいだ。

冷やす、はとてもいい発見かも知れない。


作ったものをすぐに食べるときに臭いがしないのは、ダメになる前に食べているから。

ならダメになる前に冷蔵庫で冷やして状態をキープさせ、電子レンジで温めて復活させれば良いんだ。

それだけで飯が不味く無くなるのなら大発見だ。

これまでは学校という環境上、冷蔵庫を使用することが出来なかったが、これからはきっと臭いに悩まされることが少なくなる。

食事という行為が嫌いじゃなくなれる。

もしかすると乱歩はこれを狙っていたのだろうか。

彼奴の思考を理解するには、考え過ぎや穿ってるくらいがきっとちょうどいいと昨日学んだからきっとこれが正解だ。

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設定タグ:文豪ストレイドッグス , トリップ , 江戸川乱歩   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:笹山花音 | 作者ホームページ:   
作成日時:2019年3月25日 10時

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