迫られる店主 ページ10
「いくら異能持ちだとはいえ、君は女性だ。現に私の腕も振り解けないだろう」
確かに……
それなりに武術の心得はあるが、男女の力の差は歴然
加えて無効化の異能力と来れば、私に出来ることは何も無い
「私、いつも言っているよね？君は美しいのだから他の男には気を付けろって」
そう話しながらも、太宰さんが腕の力を緩めることは無い
寧ろだんだん近くなり、まさに唇が触れようとする＿＿＿＿
「ご冗談を。1番危険なのは貴方でしょう？それに、淳くんが可哀想なのでもうやめてください」
チラと淳くんの方に視線をやると顔を真っ赤にしてフリーズしてしまっている
「……ありゃりゃ。」
「ちゃんと連れて帰ってくださいよ」
ようやく太宰さんから解放され、既に空になっているカップを片付ける
「こら淳くん。しっかりしたまえー」
放心状態の淳くんの方をぺちぺちと叩く太宰さんを横目に路地裏の男性、″芥川さん″について思い出す
確かに物騒な異能を持っているようだったが、そこまで悪い人には見えなかった
……言動はかなり過激だったが
どんなお茶を出そうか、どんな甘味が好きか、などと考えていると、するりと腰に違和感を感じる
「……なんですか、この手は？」
顔を上げるとニコニコと微笑む太宰さんの姿
「いやぁ、物思いにふける姿も美しいと思ったらつい、ね？」
「はぁ、ありがとうございます。」
全く感情を込めていないお礼とともに、腰辺りを動き回る手を叩き落とす
「うふふ、それじゃあ私達は失礼するよ。また近いうちに来るけどね」
ヒラヒラと手を振りながら店を後にする太宰さんと淳くんを見送る
それにしても……
「面倒なことになったな……」
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作者名：しゃちほこ | 作成日時：2018年3月14日 21時
