禍狗の感情 ページ12
チリンとベルの音が鳴り、お客様の来訪を知らせる
「いらっしゃいませ……って、芥川さん?」
扉へ目を向けると、そこには見覚えのある姿
サングラスをかけてはいるが、間違いなく彼だった
「僕は約束は守る。先日訪れると言った故。」
綺麗な仕草でで店内へ入り、意外にもカウンター席へと座る
……少しは興味を持ってもらっているということでいいのだろうか?
「こちらメニューになります」
彼の前に冊子を差し出せば、軽く手で制される
「いらぬ。何でもいい、貴様に任せる」
任せる…か
それならば
「ではマレインのお茶と無花果のタルトをご用意しますね」
マレインは咳によく効くハーブで、無花果のタルトは最近出来た新メニュー
「無花果?無花果があるのか?」
無花果という言葉に大きく反応する彼
心なしか僅かに瞳が輝いているようにも見える
「はい、新作なんです」
「そうか、楽しみにしている。」
カウンター内で準備をしながら考える
___本当に指名手配犯なのだろうか?
様子を伺うように視線を芥川さんへ向けると、偶然にも視線がかち合ってしまった
「なんだ」
怪訝そうに問いかけられ、一瞬言葉に詰まる
「いえ、随分可愛らしい顔をなさるんだなぁと思いまして」
微かに笑いながら答えれば、芥川さんは少し不機嫌そうに眉を寄せる
「僕が可愛らしいなどとは、笑止。それを言うなら貴様の方が___」
途中で言葉が途切れてしまった
「私が、何ですか?」
何か気に触ることでもしてしまったのか、余程可愛らしいと言われたことが嫌だったのか
その後いくら問い詰めても言葉の続きは教えてくれなかったと言う
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作者名:しゃちほこ | 作成日時:2018年3月14日 21時