第4話 : 期待 ページ6
教頭先生に案内され、私と星野先生は職員室の中に併設されている小部屋に入る。
ソファとテーブル、部屋の角には小さなテレビが設置されている。
教頭先生に言われて、私たちはそのソファに腰をかけた。
しばらく明日の日程について話を聞いた後、質問はないかと聞かれ、私は首を振る。
「Aさんの活躍には期待してますから、明日はよろしくお願いします」
教頭先生に元気よく言われて、私は会釈をする。
期待されるのは苦手だが、特待生となれば仕方のないことだ。
「じゃあ今日はこの辺で。わざわざありがとうございました」
「こちらこそ、お時間を割いていただきありがとうございました」
私は立ち上がって教頭先生にお辞儀をする。
職員室から出て家に帰ろうとする前に、星野先生に呼び止められた。
「A」
「はい」
「あんまり、無理に期待を背負う必要はないから」
今日初めて会った人に、私は全てを見透かされているようだ。
「Aなら心配いらないよ」
星野先生に笑いかけられ、心が暖かくなる。
星野先生は、今日のような春の日によく似た、優しくて心地の良い人だ。
「ありがとうございます」
「明日がんばれっ」
先生は私の頭をくしゃくしゃに撫でる。
私は思わず笑みをこぼす。
こんな素敵な毎日が続くのなら、これからの高校生活も悪くはないと思った。
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作者名:佐々木さん | 作成日時:2020年12月7日 2時