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第10話 : 朝のクセ ページ12

翌日、朝礼が八時三十分から始まるこの学校に、私はちょうど一時間前に着いた。




学校生活が楽しみで張り切っている、とかではなく、中学校の頃のクセが抜けないのだ。






私は毎朝早くに学校へ来て、一人教室で勉強をする。




周りに追いつこうと必死で、どうしてもやめられなかったクセだ。



こんな朝早くに学校にいる人は先生でもほとんどいない。






それでも、七時四十五分くらいになって、一人の男子生徒が教室に入ってきた。




「わ、早っ」



足が長く、スタイリッシュな生徒だ。顔にはまだあどけなさが残っている。





「立川さんだっけ」


「はい」



代表挨拶の影響は本当にすごい。


誰もが私の名前を覚えてくれている。





「すごい、勉強してるんだ」



彼は私の机の上に広がる教科書などを見て、此方に近づいてくる。




「しかもこれ、昨日配られたばっかの教科書じゃん」



今度は近くにあった椅子を持ってきて、私の前に座った。





「あの…」


「あ、ごめん。俺、岡田健史。よろしくね」



岡田くんは爽やかに言う。


朝日が窓からさして、彼の横顔を照らす。





「岡田くんも、早いじゃないですか」


「俺はワクワクして眠れなかった」



岡田くんが楽しそうに笑うので、私もつられて笑う。





「ていうか、なんで敬語?」


「あ、すみません」


「立川さん面白いね」



岡田くんも、昨日の星野先生のように笑った。




「あの、タメ口にするので…するから、Aって呼んでください。じゃなくて、呼んで?」



「うん、勿論だよ」


岡田くんは私の下手なタメ口に笑いながら頷く。





「じゃあ俺からもお願い」


私はその言葉に思わず構える。




「勉強が苦手なので、毎朝ここで勉強を教えてください」



岡田くんは楽しそうに言う。



劣等生の私に勉強を教えてほしい、だなんて言ってくれたのは岡田くんが初めてだ。




「私でよければ、喜んで」


「ほんと?じゃあ、約束」



岡田くんはそう言って小指を差し出してくる。



私も岡田くんのように小指を出して、岡田くんの小指と絡め合わせる。




自ら男性に触れるのは緊張する。



向こうは何も意識などしていないだろうが、私は心臓の音が聞こえそうなくらい意識してしまっている。





「これでAと仲良くなれる機会ができたね」



私は頷く。




自分と積極的に距離を縮めようとしてくれている岡田くんを前に、思わず頬が綻ぶ。
 

第11話 : 数学→←第9話 : 矛盾



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作者名:佐々木さん | 作成日時:2020年12月7日 2時

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