第11話 : 数学 ページ13
始業を予告する鐘が鳴ると、席につき始める生徒も、全く動こうとせず友人と話している生徒もではじめる。
私は数学の道具を持ち、階段を登って教室へ向かう。
教室にはまばらに生徒がいるだけで、まだ先生はいない。
私は空いていた前の方の席に腰をかける。
しばらくすると、もう一度チャイムが鳴った。
今度は始業のチャイムだ。
それより少し遅れて、先生が教室に入ってくる。
顔立ちが良く、優しそうな先生だ。
後ろから微かに黄色い声があがった。
「すいません、じゃあ始めます」
先生が言うと、生徒たちは立ち上がり、挨拶をする。
「おはようございます。改めまして、みなさん入学おめでとう。僕は数学科の中村倫也です、よろしく」
先生はそう言いながら、黒板に自分の名前を書いた。
「倫也せんせ〜」
後ろの方から女子生徒が二、三人くらいで声をかける。
「うんうん、六組の生徒もちゃんと出席しててえらいえらい」
倫也先生はそう言いながら出席簿に何やら印をつける。
どうやら彼女たちは、倫也先生が担任を受け持っている六組の生徒らしい。
女子生徒たちは倫也先生の姿に見惚れ、目がハートになっている。
「みんなは数学の上級クラスだから、他のクラスよりも少しだけ難易度の高いことをやるけど、まあみんななら大丈夫」
倫也先生はへらへらと笑う。
「僕の授業はそんなに難しくないから、多分」
先生はどこか抜けていて、自由奔放なところがあるらしい。
「だけど授業にはちゃんと出席して、頑張ってほしいかな。良い成績だった人には、終業日前に飴をあげます」
倫也先生は自分で言いながら、どこか嬉しそうな表情をする。
先生の癒しオーラに、クラスの生徒たちはすでに虜になっているようだった。
もちろん、私もそのうちの一人だ。
先生の眠気を誘うような優しい声に、私のまぶたはゆっくりと落ちていってしまった。
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作者名：佐々木さん | 作成日時：2020年12月7日 2時
