雄英脱出【死柄木弔】 (ページ31)

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思春期の嫌々期ページ31

職場体験の内容はふざけたものばかりでむしろ楽しい。デニムは俺たちの髪型を執拗に8:2にしてきた。ばくごーは針金みたいな髪質なのかすぐ戻ってた。俺はサラサラすぎてすぐ戻った。

そんな反骨精神の塊の俺らにデニムは手を焼いてた。ざまあみろだ。この気持ちはばくごーも同じらしくて、ちょっとだけ、本当にちょっとだけ分かり合えた。

8:2生活初日の夜。シャンプー3回で8:2を完全に洗い流して就寝の準備。ばくごーもだいぶ長風呂だったからクセが取れなかったんだろう。

支給されたジーンズを恨みを込めて畳んで電気を消す。布団を被って隣のばくごーに話しかけた。

　「俺何やってんだろ」

「テメェと同じなんは癪だが同感だわ」

ばくごーは天井を見たまま言った。爆破か無視されると思ったのに珍しい。コイツはなんだが弱ってるように見えた。緑谷のことかな。幼馴染とか言ってたし、焦ってんのな。

　「ミドリ…」

「あ゛ぁん？」

　「過剰反応」

小声で名前言っただけなのに。どんだけ好きなんだよ。頭ん中緑谷まみれですか。俺は死柄木さんまみれ。

今の俺はクラスメイトと修学旅行の夜にワクワクしてる高校生みたいだ。今の俺はきっと死柄木さんには釣り合わない。あんだけ見て欲しいって望んでんのに。それでも俺はヒーロー目指すのかな。

　「…カッチャンはなんでヒーロー目指すの」

「かっちゃん言うな。オールマイトに憧れたからだよクソが。」

　「ふーん」

俺の薄い反応にムカついたのか布団越しに蹴られた。俺はオールマイト嫌い。なんでだろう。自分の気持ちが分からないのは思春期ってやつ？

「…てめーは？」

　「え？」

「テメェはどうなんだよ。なんでヒーロー目指すんだよ」

　「え、あ、いや」

ばくごーがこんなこと聞くなんて予想してなかった。言葉が詰まる。ホントはヒーローなんかになりたくない。なんて言えない。これが本心なのかもあやふやだ。

死柄木さんに見て欲しい。それだけでいろいろ頑張った。なんで俺は見て欲しいの？切島は友達？俺がヒーローにならなかったら…？

　「…イ、言いたくない。」

「そーかよ。」

ばくごーはつまらなそうに寝返りを打って俺に背を向けた。

ヒーローが嫌い。俺を見ないから。おかあさんが嫌い。俺を愛さないから。自分が嫌い。何もかも中途半端だから。

腹が立ってきてばくごーを布団越しに蹴った。それに反応してブチギレられた。枕投げの大乱闘になって最終的にデニム男に縛られて寝た。