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「こんくらいのことって何やねん。盧笙にとっては、そうでもな。俺が、俺は、今までどれだけ……」
「せやから」
俺は、まるで教室にいる時のように声を張った。
「お前は、そんくらいで諦めへんやろ」
驚いた顔の簓の隣へ、俺はどかりと座った。スプリングが効いたベッドが歪み、耳障りな音をたてる。
「デビューしたての俺らに初めてファンレター送ってくれたのは彼女やろ。あれから解散して、ラップグループ組んで……何年間、見守ってもろたと思てんねん」
「せ、せやから……」
「こんだけ粘着して、応援してきてもらったんやで。お前が邪魔なわけないやろ」
「い、言うてることムチャクチャやで……?」
八の字に歪んだ眉が、糸目と相まって捨てられた子犬のような表情をつくった。
何を怖がってるんや、こいつは。
「お前、その程度の覚悟でAさんの近くにおったんか」
俺の言葉に、へらへらなよなよしていた簓が牙をむいた。
「そんなわけあらへん!!Aチャンのファンレター貰った日から、俺は彼女ひとすじや!どんな手を使っても幸せにしたる!」
簓は、「芸人も止めへんし、Aチャンも手放さへん……!」と鼻息荒く言った。
思わず、俺の口元が緩む。
「せや。その意気やで、簓」
そう言って元相方の肩を叩くと、ちょうど千歳くんが扉を開けた。
「白膠木くん、盧笙先生。ご飯、できたばい」
「あ!千歳くんや!」
「任せっきりにしてスマンかったな。千歳くん、準備おおきに」
俺は簓と千歳くんとダイニングへ向かい、3人で夕食を食べた。
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高炉 - 八守葵さん» ここから心苦しいことが続きます。どうかお付き合いください。 (2021年5月29日 19時) (レス) id: 996b1b07b3 (このIDを非表示/違反報告)
八守葵(プロフ) - うわぁ…小鳥遊さんを通して自分の気持ちに気付いて混乱というか不安というか………夢主ちゃんの気持ちは気付いちゃいけなかったのかな…簓さんの懇願するみたいな心の叫びに凄く胸が締め付けられました……泣きそうです… (2021年5月26日 7時) (レス) id: e7d640d42f (このIDを非表示/違反報告)
高炉 - 八守葵さん» 大切にしてるからこそ、ガンガン攻められない簓さん……。自分の癖を詰め込んでいく方向で執筆しております。同志がいてくれて嬉しいです。 (2021年5月22日 17時) (レス) id: 02eddfa9d5 (このIDを非表示/違反報告)
八守葵(プロフ) - ハァァァ〜〜、待って下さいシチュエーション最高すぎません?彼氏って言われて浮かれるのとか芸人としてじゃなくて一人の男の人として夢主ちゃんに想いを寄せているんだなぁ……って思いました! (2021年5月21日 22時) (レス) id: e7d640d42f (このIDを非表示/違反報告)
高炉 - 八守葵さん» いえいえ!こちらこそ、企画期間中たくさんのリクエストをよせていただきありがとうございました。猫化の話など、個人的に気に入っております! (2021年5月9日 19時) (レス) id: 348a12973c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:高炉 | 作成日時:2021年5月1日 17時