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「……」
部署の扉を閉じて、私は小さく息を吐いた。
まさか、あんなものを見ることになるとは思わなかった……。小鳥遊さんは、あのことを知っているのだろうか。いや、先日に化粧室で私に言ったあの言葉。
「ごめん。ちょっと羨ましくなっちゃって」
……きっと、知っていたに違いない。
彼女から見て、私はいったいどういう風に見えているのだろう。
私は、白膠木簓という人間にどういった感情を抱いているのだろう。
そう考えた時、急に怖くなった。
それでも自分の感情を抑えきれず、頭のなかが飽和して、どんどん感情があふれていく。
「す、き……っ」
好きだ。
好きに決まっている。
白膠木簓というピン芸人ではなく、白膠木簓という元どついたれ本舗の芸人ではなく、白膠木簓という人間そのものが好きなのだ。
こんなこと、簓さんの方から近づいてきてくれなければ気づくことは無かった。
一番にファンになったとはいえ、一介のファンのままで十分に幸せだった。劇場へ欠かさずに足を運び、幸せを享受する。
舞台の上に立つ彼は、一人であろうと二人であろうと、変わらずにスポットライトを浴び続けていた。
その姿を見られるだけで幸せだったんだ。
「簓さんのせいだ……」
いつの間にかフルネームで呼ばなくなった自分が憎らしい。
ボロボロと頬を涙がつたう。ブラウスが濡れて、化粧が落ちていくのが分かった。
私は慌てて近くにあった会議室に入る。鍵もかかっていなかったし、きっと大丈夫だろ。
「うわっ、スミマセン……っ」
「い、いえ……」
扉を開いたとき、誰かとぶつかった。私は顔を見られたくなくて、俯いたままでいた。
壁に背をつけて蹲り、スカートが汚れることも厭わずに泣き続ける。震える指で何とかメールボックスを開いて、「具合が悪いので、少し休憩をしてからもど、ります。スミマセン」と上司に連絡した。
携帯を閉じようとしたとき、私の目にある名前が飛び込んできた。
こういう時に頼れるのは、彼しかいない。
Aこはるちゃん、たすけて
そう送った後に、私は少し考えて、別の人あてにメッセージを送った。
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高炉 - 八守葵さん» ここから心苦しいことが続きます。どうかお付き合いください。 (2021年5月29日 19時) (
レス) id: 996b1b07b3 (このIDを非表示/違反報告)
八守葵(プロフ) - うわぁ…小鳥遊さんを通して自分の気持ちに気付いて混乱というか不安というか………夢主ちゃんの気持ちは気付いちゃいけなかったのかな…簓さんの懇願するみたいな心の叫びに凄く胸が締め付けられました……泣きそうです… (2021年5月26日 7時) (レス) id: e7d640d42f (このIDを非表示/違反報告)
高炉 - 八守葵さん» 大切にしてるからこそ、ガンガン攻められない簓さん……。自分の癖を詰め込んでいく方向で執筆しております。同志がいてくれて嬉しいです。 (2021年5月22日 17時) (レス) id: 02eddfa9d5 (このIDを非表示/違反報告)
八守葵(プロフ) - ハァァァ〜〜、待って下さいシチュエーション最高すぎません？彼氏って言われて浮かれるのとか芸人としてじゃなくて一人の男の人として夢主ちゃんに想いを寄せているんだなぁ……って思いました！ (2021年5月21日 22時) (レス) id: e7d640d42f (このIDを非表示/違反報告)
高炉 - 八守葵さん» いえいえ！こちらこそ、企画期間中たくさんのリクエストをよせていただきありがとうございました。猫化の話など、個人的に気に入っております！ (2021年5月9日 19時) (レス) id: 348a12973c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：高炉 | 作成日時：2021年5月1日 17時
