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はばないすでい! ページ27

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 こんなに酔っているAチャンの声も、蕩けてしまいそうな声も聞いたことがなくて、俺はどうすれば良いのか分からなくなった。

 とりあえず携帯を握りしめていると、今度はやけにハッキリとした声が聞こえてきた。


『もしもし』
「……はい」
『えーと……小鳥遊と申します。宮ちゃん……Aちゃんの彼氏さんですか?』
「せやけど」


 会社の人だろうか。
 少しだけ疑いつつも応答すれば、「良かったぁ」と安堵したような声が聞こえてきた。


『あ。ちょうど良いんで、宮ちゃんのこと迎えに来てもらって良いですか?』
「かまへんで。呑んでるところ、どこか教えてもらえる?」


 タカナシさんから聞いた場所をすぐさま検索し、俺は大家さんに一声かけてからアパートを飛び出した。

 酔っぱらってるAチャンのお迎えとか、まさに「彼氏」って感じがしてええやん?
 チョットくらい浮かれたって、罰は当たらへんやろ。











 店名を確認してから店の中へ入ると、さっき電話をかけてきたらしき人がAチャンの頭を撫でていた。

 そこへ回り込むように近づき、声をかける。


「こんばんわ〜。さっき電話もらった者やけど……」
「ああ……って」


 Aチャンの隣にいた人がこちらを見て、驚いたように目をまん丸とさせた。ハッ!と大きく口を開けかけたところを、すかさず塞いで、自分の口元に人差し指を立てた。

 Aチャン……すっかり寝てしまってるみたいやし、起こしてしもたら可哀そうやろ。


「このこと、皆にナイショな?」


 タカナシさんが頷くのを確認してから、俺はAチャンを担ぎ上げる。可愛らしいスカートを履いていたから、ちゃんと巻き込んで持ってあげるのも忘れない。


「じゃ。先に帰らせてもらうな」
「は、はい……」


 自分の財布から何枚かお札を取り出して机の上に置き、そのまま店を後にした。

 ギラギラとしたネオン街を、Aチャンを背中に担いで歩いていく。
 アパートから走って来てしもうたから、少し長めに歩いていかなければならない。車で来るべきだっただろうか。でも、Aチャンと一緒に歩けるなんて早々ないから嬉しい。


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高炉 - 八守葵さん» ここから心苦しいことが続きます。どうかお付き合いください。 (2021年5月29日 19時) (レス) id: 996b1b07b3 (このIDを非表示/違反報告)
八守葵(プロフ) - うわぁ…小鳥遊さんを通して自分の気持ちに気付いて混乱というか不安というか………夢主ちゃんの気持ちは気付いちゃいけなかったのかな…簓さんの懇願するみたいな心の叫びに凄く胸が締め付けられました……泣きそうです… (2021年5月26日 7時) (レス) id: e7d640d42f (このIDを非表示/違反報告)
高炉 - 八守葵さん» 大切にしてるからこそ、ガンガン攻められない簓さん……。自分の癖を詰め込んでいく方向で執筆しております。同志がいてくれて嬉しいです。 (2021年5月22日 17時) (レス) id: 02eddfa9d5 (このIDを非表示/違反報告)
八守葵(プロフ) - ハァァァ〜〜、待って下さいシチュエーション最高すぎません?彼氏って言われて浮かれるのとか芸人としてじゃなくて一人の男の人として夢主ちゃんに想いを寄せているんだなぁ……って思いました! (2021年5月21日 22時) (レス) id: e7d640d42f (このIDを非表示/違反報告)
高炉 - 八守葵さん» いえいえ!こちらこそ、企画期間中たくさんのリクエストをよせていただきありがとうございました。猫化の話など、個人的に気に入っております! (2021年5月9日 19時) (レス) id: 348a12973c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:高炉 | 作成日時:2021年5月1日 17時

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