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「手を貸せ、こいつを＿＿＿＿」
『………敦くん？』
荷物を差し出す国木田を敦が通り過ぎて歩いた。
不自然な敦の行動に、国木田とAは揃って振り向き、首を稼げる。
敦も歩みを止め、ゆったりと振り返った。
眦を下げ、情けない笑みで震えを隠す様な声音で言った。
「………心配いりません。
これでもう探偵社は安全です。
＿＿＿＿最悪の事態にも、もうなりませんから」
「………はぁ？」
頭の中がはてなで溢れかえる国木田を他所に、Aは眉根を寄せた。
“最悪の事態”とは何の事であろう。
敦は、泣きそうな顔で走り去って行った。
もしや、と思い国木田に問う。
『……国木田さん、に…とって、の、最悪の事態……って、何…？』
「最悪の事態？
そんなのは決まっているだろう。
＿＿＿＿探偵社への襲撃だ。
備品の廃棄に発注、周辺への謝罪、業務予定の妨害。
これ程最悪な事態はないぞ」
いつも通りの表情で、何を行っているんだと言わんばかりの調子で言われたA。
その時、敦の行動の理由がわかった。
そして、言った。
『………国木田さん……あんぽんたん』
「なッ」
「何で気付かないかな」とか、「矢っ張り馬鹿だったんだね」とか、「敦が可哀想」とか。
理解が追いつかない国木田に散々言ってのけたA。
その後も散々愚痴愚痴言って、資料の整理を終え探偵社へ戻った。
これから来るであろう襲撃を、少し楽しみにしながら。
＊＊＊＊
「＿＿＿＿失礼、探偵社なのに事前予約を忘れていたな。
それから叩敲も」
探偵社の扉が弾き飛び、社員たちの表情が驚愕に染まる。
扉を破壊した張本人であろう少し落ち着いた雰囲気の老人が、事務所の中を指差し言った。
「大目に見てくれ。
用事はすぐ済む」
一斉に動き出した黒服の集団＿＿ポートマフィア。
国木田が大きく目を見開いた。
それを横目で確認しながら、最初の銃撃を防ぐ為に、異能力を使う。
『【神々からの寵愛】』
「下がっていてくださーい」
盛大に事務所に響き渡る銃声の大合唱。
その合間に聞こえたのは、落ち着いた相手の心に甘美な感情を与える少女の声。
其れに、呑気で気抜けしてしまう様な少年の声だった。
ラッキーアイテム
革ベルト
ラッキーキャラ
梶井基次郎
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作者名：鸞宮子 瑩 | 作成日時：2019年11月8日 20時
