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《運命論者の悲み》 ページ2

「____ぎゃああああああ!!」









窓から差し込む光は暖かい。

事務フロアにあるソファに座り、淹れたての甘い紅茶の匂いが空間を漂った。

そして、隣には用事から帰ってきた相棒のソフィア。

正に、至極の空間とも言える現在この状況。

その場にBGMの様に流れるのは、治療中の谷崎の悲鳴で____

………………悲鳴で。









「どうやったら治療中の人の悲鳴が聞こえてくるのでしょう」









『………傷口に、消毒液…ぶっかけ、た時………?』









「それは痛いですね」と言ってソフィアは一口紅茶を含んだ。

他に事務員は今は丁度居らず、二人で仄々と過ごしていると、慌ただしい様子の国木田が現れた。

丁度いい、そう思い、国木田に何故悲鳴が聞こえるのか聞いてみる。









「ああ、其れは与謝野女医の異能力でだな、知ってるだろう。
【君死給勿】は瀕死の重傷しか治せない」









その言葉に目を伏せる。

そして、医務室の方に目を向けると、微かにだが、明らかに治療中ではない音がした。

此れは気付かない方がいい。

そう思い何事もなかったかの様に話題を変えようとするが。









「つまり、与謝野先生は谷崎兄妹を解体していると?」









同じく音に気付いたソフィアが、さらっと口にした。

知らない様にしたかったAと、
経験したことがあるのであろう、国木田の顔が真っ青になっていく。

恨む様にソフィアを横目で見、何時もよりも低い声で喋った。









『折角、気付かない、様に…してた、のに』









一つ一つの仕草さえも愛らしいAにソフィアはぐっと喉を詰まらせた。

平常を保つ様に、指を一つ立て、ドヤ顔で言い放って見る。









「私は怪我をしても直ぐに戻ればいいわけですから、解体される心配はないのですよ」









『………ソフィア、意地悪。
おたんこなす………』









死語を放つAに平然と対応するソフィアと、少し驚く国木田。

笑ってAを揶揄うソフィアは、Aの従者ではなく、姉の様であったと、後に国木田は語る。

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作者名:鸞宮子 瑩 | 作成日時:2019年11月8日 20時

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