質 ページ9
白く、肋が浮き出た細く弱々しい体。
その体に刻まれて居たのは大量の傷だった。
此処に来る時に付いた傷ではない、古い傷がいくつもあった。
___否、古い傷が体を覆う様にして全身にあった。
煙草を押し付けられた様な小さな火傷の跡、そして大きな爛れ、
その上に重なる様にしてできた深い切り傷。
肌が青紫色に変色している箇所も少なくなかった。
全身のうちでも背中は特に酷いもので、まるでなにかを打ち付けられたかの様な大きな傷に、
その上にまるで態とつけたかの様な背中を覆う程の火傷跡。
『俺、虐待されてたんだよ』
「________」
続けられた言葉に尾崎はただその言葉を聞くことしかできなかった。
明らかにおかしい傷の量。
齢十を満たすか満たさないか程の女児が背負って良い傷では無い。
蓮は、感情を灯さぬ目で腕に着いた爛れを撫でて居た。
『でも俺、痛みを感じなくなったんだ。
だから、最後の方は辛くなかった。
____でも、痛みは感じなくても心はいつも泣き叫んでた。
助けてって。
そう言っても助けてくれる大人がいない事、俺分かってたから』
「………蓮」
『…ねえ、尾崎さん。
幼い子供が一番辛い事ってなんだか分かる?』
「………解らぬ」
『____大好きな、大好きだった親に傷つけられる事だよ。
………親に裏切られた時、すっごく悲しかったよ、俺は」
ガラス玉の様だった瞳に、今度は深く複雑な感情が渦巻いている。
尾崎は其れを見て、喉が引き締まった。
こんなに悲しそうな顔、二度とさせたく無い。
そう思った。
「____蓮。
私が其方を愛してやろう。
其方の母親となってやろう。
二度と、悲しい思いをさせぬ様、其方の身を守ってやる」
ふわりと裸の蓮を抱きしめた尾崎。
蓮は微かに目を見開いた。
それから、嬉しそうに目を細め、目にいっぱいの信頼を宿し言った。
『………尾崎さん。
俺、尾崎さんが大好きになった』
えへへ、と笑った顔は年相応の物で、この顔がよく似合う、と尾崎は思った。
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作者名:鸞宮子 瑩 | 作成日時:2019年9月19日 21時