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「____それで、これほどの被害をこの少年一人が出したと?」





「はい。

出口で中也が油断せず止めてたらこんな事にはならなかったかと思いますが」





「うるせェな!

あんな異能力、わかるかよ!」





「まあまあ。

仕方ないよ、私もあの被害は予想出来なかったからね」






薄暗い部屋で交わされる会話。


時たま暴言も混ざる其れは、マフィアの首領__森 鴎外、

そして最年少幹部__太宰 治とその相棒__中原 中也によって織り成されるものだった。






「しかし、あれ程の能力、是非とも欲しいものだね」






「必ずマフィアに入れて見せますよ。

今、医務室で姐さんが見てくれてます」






その言葉に中原は、あの身元不明の少年によって負わされた怪我の部分に巻かれた包帯を触った。







「それと、首領。

一つ、あの少年には欠点があるかと」






「なんだね?」






太宰はゆっくりと口を開きいった。







「____恐らく、極度の人間不信かと」







その言葉に森は頷く。


横で中原は微かに目を見開いた。






「おい、青錆、手前、いつそれに気づいたんだ?」






「なあに、地下牢の中でちょっとね」






怪しげに笑う太宰に中原はチッと舌打ちをし、森の指示を待った。


森は薄く唇に弧を描き、一つ、と指を立てた。






「彼の人間嫌いを克服させるのも悪くわないかもしれない。

だが、私は別にその必要はないと思うのだよ」






その森の言葉に太宰は、何が言いたいんですか、と問う。


森はメスをヒュッと太宰と中原の間にあった的に向かって投げた。







「少年を、此処に連れて行き、実力を見て来なさい。

使えないと思っても、一応は連れ帰って来ること」






所謂試験だね、と笑いながらも、その内容は可愛いものではなかった。


一応連れて帰って来る、と言うことは死ぬギリギリまでやらせろ、と言うことだった。






「____今は使えないものでも、鍛え上げれば何れ使えるものへ変わるかもしれない。
それでも使えないと判断するのならば、其れは斬り捨てても構わない」






手元にあるもう一本のメスを眺めながら森は言った。


太宰と中原はその言葉に唾を飲む。


わかったね?、と言って森が渡して来た書類を受け取り二人は頷いた。


失礼します、と言い残し二人は首領室の扉を閉めた。

肆→←弐


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作者名:鸞宮子 瑩 | 作成日時:2019年9月19日 21時

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