敬神崇仏 /kn ◎ ページ11
※ﾔﾝﾃﾞﾚ注意です。かなり読む人を選びます。
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「教祖様、どうか私めの話を聞いていただけますでしょうか」
「うん、いいよ。言ってごらん」
口元からふう、と紫煙が吹き出される。煙管を無駄のない動作で軽く持ち上げ、妖艶に微笑んでみせた教祖。
すると教徒は涙を流して手を組み頭上まで持ち上げる。
開かれた瞳は深海を映し出したかのように冷めきっていた。
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「教祖疲れたなぁ……話聞くだけってのも楽じゃないねぇ」
かつ、かつ。まるで語りかけるように呟いた言葉は誰にも拾われることなく眩んで溶けていく。
青を基調とした紫陽花を彷彿とさせるような、くすんだ色彩の着物が哀れにも床にジリジリと引き摺られ、裾が埃を纏っていく。
しかしそれを気にもとめずに男は温度さえ感じないコンクリートの階段を一人降りていく。
誰にも、知られずに。
「A、来たよ」
「きょうそさま……」
あどけなさの残る声色で少女が迎え入れる。まるでホテル客室のような華やかさと牢獄のような物悲しさを含む内装だ。
真っ白なワンピースに身を包んだ少女は覚束無い足取りでよろり、とその上等な織物に抱きつく。
「いい子で待っていられたね。」
「きょうそさま、わたし、えらい？」
「偉い偉い。さぁ、飴をあげよう」
雪の混じる汚れひとつない純白の肌と長い睫毛がそっと男を見上げる。ぷっくりと赤く染った頬が今か今かと紅潮し、薄く小さな唇が小ぶりな飴をからり、と飲み込む。
「きょうそさま、きょうはね、くまさんとおちゃかいをしたの。」
「そう、喜んでもらえて何よりだよ。」
教徒からの貢物で貰った、西洋のテディベア。極めて清良なものであると素人目でもわかる人形、なのだが。その教祖相手ではどんな物であろうが全て塵同然だ。
「ねぇ、ねぇきょうそさま」
「急がなくてもいいんだよ。今日は俺と夜通し一緒だからね」
秀麗な容貌が恍惚に歪む。熱く息を吐き、深く深く口付けた。少女の手を取って腰を引き寄せる。力を加えれば折れてしまうようなか細い足首には、ぴったりと覆うように足枷が巻きついている。
「俺だけの愛し子、どうか離れないで」
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作者名：りつ | 作成日時：2022年5月16日 18時
