目覚め /kn ページ3
※事後ネタ含みます
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チュン、と小鳥の囀りが鼓膜を揺らす。小洒落た目覚めにゆっくりと瞼を開けると目の前に居たのは。
「きっ!?!?!?」
我が恋人こときんときであった。
ぐしゃあ、と無防備にも散らばった黒髪と彼を妖艶に仕立て上げる泣きぼくろをはた、と視界に入れて昨晩の情事を思い出す。
「あ、起きた?」
「私の事ずっと見てたの……?」
「だって朝起きて俺がいなくなったら寂しいって昨日言ってたよね」
「やめて…………」
早々に情けない声を上げた私に彼が快活に笑って起き上がる。突如急な眠気に襲われて眠ってしまった私の体を掃除してくれたのだろうか、いつの間にか体も綺麗になっている上服も着ている。
「朝はご飯?パン?」
「どうしたのきんちゃん、尽くしてくれるじゃん」
「昨日は無理させたからね。これで許してもらえ」
「ない」
「ないか〜」
よろよろ、と覚束無い足取りでリビングへ向かいつつもエプロンを付けた彼とテンポよく会話をする。
かつてこんなにもエプロンが似合う男が居ただろうか。
「全くもう……おかげで腰が痛いんだけど」
「ふふ、それを言うなら俺も背中が痛いかな。ちょっと爪伸びてるんじゃない?」
ああ言えばこう言う。くすくす、と笑いながら早朝の暖かなな時間が過ぎていく。あぁ、仕事に行きたくないなぁ。
「今って何時?」
「九時」
「この野郎!!!!!!」
前言撤回である。
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作者名:りつ | 作成日時:2022年5月16日 18時