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「お母様！お母様！」
いつもは上品に振る舞うAが、スカートを翻して走るのを見てアナスタシアはくるりと目を丸くした後、可笑しそうに微笑んだ。愛しい娘は、どうやらそれほどまでにホグワーツの入学が嬉しいらしい。
「あのねっ、あのねっ、ついに来たの！ねえ、わたし早く準備に行きたいわ！」
「まあ、そんなに焦らないで。明日、ヨシュアがダイアゴン横丁に連れて行ってくれるわ」
「とっても楽しみ！ああ、早く行きたい」
うっとりと瞳を煌めかせるA。メロウがむすりとAを見上げた。
「お姉様、ぼくを置いて行ってしまうの？」
「ごめんねメロウ、でも冬休みにはきっと帰ってくるわ。きっとね」
「絶対、でしょう！お姉様はぼくと離れてさみしくは思わないの？」
「とってもさみしいわ！もちろん、そう思うに決まってるでしょう？けれどとっても楽しみな気持ちもあるの」
浮かれた様子のAには、彼の甘えにも今は心乱されてはくれないようだ。メロウはつまらなそうに肩を竦めた。
「お母様、わたしは当然スリザリンよね？きちんと入れるかしら？」
「もちろん入れるわ。わたしもヨシュアもスリザリンだったの。とても誇り高い、素敵な寮よ」
「わたし絶対にスリザリンに入りたいの！」
「ええ。けれど、レイブンクローも悪くないわ」
「お母様はレイブンクローの末裔の一族ですものね！でも、やっぱりスリザリンよね。おんなじ寮に入りたいもの」
きらきらした瞳に見つめられる。アナスタシアも娘にスリザリンに入って欲しかった。
「わかっているとは思うけれど、お友達はきちんと選ぶこと。純血の名に相応しい振る舞いをすること」
「はい、お母様」
Aは素直に頷いた。小さい頃から言われ続けてきた教えに染まり切っていた。あるいは、それ以上に、Aは純血主義者だった。
アナスタシアは満足そうに自慢の娘の髪を撫でた。一束掬うと、小さな白い耳がちらりと見える。
アナスタシアの白魚のような指を、流れるように黒い波が滑り落ちてゆく。艶やかに光り輝く、美しい髪だ。アナスタシアの銀髪とも、ヨシュアの茶髪とも違う。天使の輪を浮かべるこの黒髪はあのひとに似ているのだ。スっと筋の通った形の良い鼻や、少し上向きの薄い上唇も。
アナスタシアは娘の成長を喜びながらも、憂いていた。愛らしく、美しく育つA。入学すれば、もう隠し続けることはきっと出来ない。Aが真実を知るいつかは、きっと、そう遠くない未来だ。
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うたかた(プロフ) - 第一部隊さん» ありがとうございます。最近時間がなくてなかなか書けていませんが、脳内のスリザリン生活をゆっくりしたためたいと思います。 (2018年10月7日 12時) (
レス) id: 0c67ed22ac (このIDを非表示/違反報告)
第一部隊(プロフ) - 凄く心地の良い文章の書き方ですね。とても面白かったです。更新楽しみにしています。頑張ってください。 (2018年10月5日 20時) (レス) id: c19040a7d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：うたかた | 作成日時：2018年9月19日 13時
