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「なんで、馴染めないのかな…」
とぼとぼと知らない道を歩く。
並木の桜はすっかり散ってしまって、緑の葉が風に揺れている。
オレンジ色の夕日を片目に、川沿いの並木道を通っていた時だった。
「だーれだ」
「ぎゃっ!」
突然目の前が真っ暗になって、思わず叫んだ
んだけど、普通に声でわかる…
「忍!やめて!」
目に覆われていた手がパッと退く。
振り返ると、やっぱりそこにいたのは忍だった。
「なあんだ、立花にはバレないと思ったのに」
ちょっと不満げだったけど、また楽しげに声を弾ませた忍。
「私、そんなにトロくないんだからね!」
プンプン頬を膨らませる。
すると忍はホッと息を吐いたんだ。
「え…なに?」
「いや、元気になってくれてよかったから」
じゃあ、忍は私を励ましてくれようとしてくれたってこと…?
そう気付くと、さっきまでモヤモヤしていた胸がじんわりと温かくなった。
今まで天然だから直球とばかり思ってたけど、ちょっと違ってたみたい。
もしかしたら、オブラートに包んでくれようとしたのかも。
「ありがとう
新しいクラスに上手く馴染めないから、ちょっと落ち込んでたんだ」
「え、なんで?
自己紹介で空気凍った?
それともクラスの女子にガツンって言いすぎた?」
「うっ…」
図星でグッと言葉に詰まる。
全然、オブラートじゃなかった…
「片山と話してるとこ見られたとか?」
「前、そんな感じのあったよな」とか言ってるけど違うと信じたい…!
「多分、そうかな」
消えた筈のモヤモヤが、また胸の中に充満する。
「この前日直の仕事放棄してたから、さりげなくだけど注意しちゃったの」
それも原因の一つだったよね、と自分の足元を見つめた。
上手くいかない自分に、嫌気がさした。
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