喧嘩 ページ24
汐恩『…』
何も話さない汐恩は
ものすごく怒っているようだった
「…とにかくここじゃ目立つから、部屋入って」
私はグイッと汐恩の手を引っ張って
部屋に入れる
部屋に入ってからも何も話してくれない汐恩
「マンションの前にいつからおったん？全然気づかなくて…」
汐恩『誰？』
「え？」
汐恩『一緒にマンションの中入っていった奴』
ピリッと空気が凍る
「あ…あの人は、バイト先の先輩」
汐恩『へー。
歩いてる時も2人とも距離近いし
Aも楽しそうに仲良さげに話して』
「いや、そういうんじゃなくて…」
誤解を解こうと話をしようとしても
今の汐恩には私の言葉は何も届かない
汐恩は私の言葉を遮って話を続ける
汐恩『俺の横普通に通り過ぎて
マンションに2人で一緒に入っていったやん』
違うのに
そんなんじゃないのに
汐恩『それでも何も無いって言えるん？』
汐恩『ファイナル終わってから
デビューの準備でスケジュールパンパンで
練習三昧で連絡も取られへんかった間に
Aはそいつと気楽に楽しく生活しとったんか』
「…っ。なに、それ」
汐恩のその冷たい言葉は
私の心をグサリと突き刺した
胸が苦しい
「……なんで？
なんで、勝手に決めつけるの？
…今日の事は、
暗くてよく見えなかったから
そもそも汐恩だって気づいてなかったし
もしかしたら不審者かもって怖くなってたら
先輩が私のこと心配してくれて
いつもより距離を少し詰めて歩いてくれた。
それに、マンションの中って言っても
エレベーターの前までやで」
「汐恩以外の人も考えた事無いし…、
…気楽、なんて、
一度も、思った事ない…っ、
…好きな人がどんどん遠くに行ってしまって
会いたくても会えなくて
電話も繋がらないし、
あとで連絡するって、
言ったのにずっとこないし。
…ほんまは、もっと一緒にいたいよ…っ
でも、それは、私のわがままだからっ…
汐恩の夢を、邪魔するわけにはいかないから
ずっと、ずっと、私は…っ」
今までずっと封印してきた色々な感情が一気に
ぶわぁっと溢れ出てきて
もう、自分でも止められなくて
涙でぐちゃぐちゃになりながら
汐恩に言葉をぶつけた
さっきまでものすごい剣幕だった汐恩は
いつの間にか
私をぎゅうっと強く抱きしめていた
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luvchim(プロフ) - 初めまして。結末を知っていても、何度読んでも涙で前に進めません。とっても良いお話をありがとうございます。何度も読み直してます。大好きなお話の一つになりました。ありがとうございます！！ (2021年1月19日 16時) (
レス) id: 1634567e36 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：s.a.o | 作成日時：2020年4月2日 2時
