けまけましい君が (ページ15)

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けまとめくんが15匹ページ15

留三郎side

過去にないくらいの速さで忍務を終わらせて、Aの実家の屋根裏にいた。
家の中でも一際広い部屋に目星をつけて、そこの屋根裏に潜む。

少しして、一人の男が入ってきた。あいつが三枝太一。Aの縁談相手だ。年は俺と同じか一つ上くらいだろう。整った顔立ちをしている。

「三枝様ようこそいらっしゃいました。もう少ししたらAの準備も終わりますので少々お待ちください」

おそらくAの兄である人がやってきてそいつに声をかけた。

そいつは問題ない事を告げると余裕そうな表情をする。さっきから苛つきが止まらない。

『お待たせ致しました』

学園にいたら絶対に見られないほど着飾ったAが現れた。スッと息を飲む。

「……あぁ、本当に美しい。この世の人ではないようだ」

同じ感想を抱いたうえに、それを言われてしまい悔しくて歯噛みする。本当に綺麗なんだ、今のA。

『ありがとうございます……。それで、お話の方ですが』

「君も知っているだろう。縁談さ。僕と結婚してほしいんだ」

言葉にされると焦りと苛立ちが綯交ぜになって、今すぐ下に降りてAを連れ出してしまいたくなる。

お願いだ、断ってくれ。

"はい"だなんて、言わないでくれ。

『……三枝様は、一体私のどこがお好きなのですか？』

Aの思ってもいなかった質問に男の目が丸くなる。

「……どういうことだい？」

『そのままの意味です』

「えっと、そうだね……。優しいところとか……家庭的なところとか……」

は？何こいつ。それだけかよ。当たり障りのないことだし、少なすぎだろ。俺ならもっと言えるけど。

「ええっと……それから……」

『もう結構です。分かっているので。三枝様は私の顔がお好きなのですよね』

「！」

顔？まあ確かにAは美人だけど。そこだけ？こいつそれだけしかAの好きなところ無いのか？とりあえず鉄双節棍で殴りたい。というか後で殴る。

『三枝様。私どもは何度も申し上げておりますが、再度申し上げます。妹は……塔子(とうこ)はもう、この世には居りません』

凛とした表情で男を見据えたAがそう言い切ると同時に、そいつが右手を振り上げた。