【gnki】夢見心地 (ページ7)

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雪解けぬ恋【md】ページ7

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インターホンを押す指は震えている。
さて、それは冬の寒さのせいか、この気持ちのせいか。きっと答えは後者であろう。
どうしよう、もう家の郵便受けに入れてしまおうか、いや、でも。

私がこうやって悩んでいるのはちゃんとした意味がある。

今日緑は風邪で休んでいた。そして緑の為に届け物をするのに使われたのが私。
普通の人なら、届け物する、帰るで終わりなこの行動。
しかし恋する乙女にはすごくキツイ。だって、好きな人の家に行くんだぞ？
もしかしたら風邪で弱ってる緑の姿も見れちゃって。

…顔に熱が集まる度に、地域の人達が怪訝な目で私を見てくる。
そろそろ通報されかねないので、インターホンのボタンにおいている指を動かす。

ピンポーン。

そんな日常の音が私の耳の中で木霊して、さらに緊張を昂らせる。
10秒ぐらいだろうか。

カチャリ

玄関が開く音がした。
何も言ってくれないが、きっとこれは入っていいという…ことでしょ？
ドアノブを引き、私はその家に入った。

「おじゃまします」

ドアを開けるとそこにはパジャマ姿の緑がいた。
熱さまシートを普段見れないおでこに貼り付け、ほっぺたはチークをまぶしたように赤い。
まじまじと見ていると、緑は少し眉を顰めて

「…なに｡」

と言った。
何時もの声とは何倍も違う、声。
少し「な」が裏返っている。二文字でも分かるように、喉の奥に痰が絡まっているな、と分かるガラガラな声だった。しかも鼻声だし。

暖房がつけられているシンプルな部屋。初めてだな、緑の家の中見るの。
あったかい。ふわふわとした空気が、私の肺を満たしていくのが分かる。
今は12月。冬真っ只中だ。
そんな訳だから、外も雪が降り積もっていて。

「プリント届けに来たんじゃないの」
「え、うん。ごめん。」

ぼーっとしていたらぶっきらぼうで少し掠れている声がとんできた。
ガサゴソとリュックサックの中を漁り、プリントを取り出す。
皺なんてない、白黒の面白くないプリント。

渡す時に緑の手が、熱かった。皮膚と皮膚が触れ合っただけで喜んでしまう。
前はこんな気持ちになったこと、なかったのになぁ。
こうも感情は恋によって変えられてしまうのか。

緑はつらそうだった。
二階に上がろうとしていたその足も、少し覚束なかった。
すき、あぁ、好きだ。なんでこの二文字が言えないのだろうか。
そんな感情を、今日も私は通学路に置いていく。