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お若い二人で ページ7

「わしは一眠りさせてもらおうかと思うからのお
 後はお若いお二人で…じゃ」

弓道場を出て少し歩いたところでおじいちゃんが謎の言葉を残して
突然ピクリとも反応を示さなくなってしまった

あまりにも無反応なので、一瞬本当に意識がないのかと心配になったが
息もしてるし口角が上がっているので狸寝入りのようだ


「………ぷっ、あはは」

マサさんと見つめ合い、たまらず二人とも吹きだす

「お若いお二人で…って、ふふ、お見合いじゃないんだから。」

「森岡先生には敵わないなぁ」

傾いてきた柔らかな日差しと、高校生たちの活気に満たされた道の真ん中で
春の香りを含んだやさしい風に包まれ
私とマサさんは視線を合わせながら笑いあった



「にしても、まさかAが森岡先生の親戚だったとはなあ」

私たちは再び並んで歩き出す
歩調を合わせ少しゆっくりと歩いてくれるのがマサさんらしい

私の事を『森岡先生の‶孫"』とあえて言わないのも、彼の優しさだろう
自分の事を話すのは得意ではないので彼の気遣いはとてもありがたい


「私だって、マサさんが風舞の関係者だなんて聞いてないよ」

自分の太もも付近で風に舞う、春らしい薄いリーフグリーンのワンピースを指先で抑えながら
マサさんの顔をそっと覗き込む

当のマサさんは「まぁ厳密に言うと出会った頃は関係者じゃなかったけどな」と笑っている

そういえば、と一瞬の沈黙の後マサさんが横目でこちらを見ながら口を開く

「Aが髪下ろしてるのもスカート履いてるのも初めて見たな」

えっ…と小さく呟いてから、これまで夜多の森弓道場に行った時の自分を思い出す
弓を引きに行くので当然髪は結っていたし、自転車かランニングで向かうことが多かったので
ジャージやパンツスタイルが基本だった

「…たしかに。」

顎に指先をあて空を仰ぎながら答える

「そういうのもいいな。似合ってる。」

想像もしなかった言葉が降ってきて思わず変な声が出てしまった
自分の顔が、全身が、一瞬にしてカッと熱くなるのを感じる

「ひゃぃっ!な…なにをっ突然っ…!」

産まれてこの方男性からそんな言葉を言ってもらったことはなかったので
驚きと羞恥でパニックに陥りそうだ
おじいちゃんに聞かれていると思うと尚の事恥ずかしかった

「ははっ、どこから声出してんるんだよ
 突然でもないぞ。道場で会った時からずっと思ってたからな」

まっすぐと曇りのない紺藍の瞳が
その言葉が嘘ではないと教えてくれた

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設定タグ:ツルネ , 滝川雅貴 , マサさん   
作品ジャンル:アニメ
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まんじゅう - 凄く面白いです!更新待ってます( *´꒳`* ) (12月30日 6時) (レス) @page12 id: 2ede693103 (このIDを非表示/違反報告)
まま - マサさんの心情の表現もよかったし、続きめちゃくちゃ気になります!! (2023年3月19日 0時) (レス) @page12 id: 21c8ee624a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さのすけ | 作者ホームページ:https://twitter.com/sanomasa0810  
作成日時:2019年7月1日 1時

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