待ってる ページ8
(…女たらしだわ………)
恥ずかしさのあまりワンピースの裾を握り締め
俯きながらそんなことを考えた
「あ…ありがとう…」
自分の顔が紅潮しているのがわかる
マサさんを直視できず、ちらりと見上げてすぐに俯く
どういう生き方をすれば、こんな恥ずかしいセリフがすらすらと出てくるのだろう
きっと誰にでも言ってる
気持ちを落ち着かせる為に自分を戒める
勘違いするな、お世辞を真に受けることほど滑稽なことはないぞ
いくらか落ち着いてきたので
私の慌てふためく様子を楽しそうに観察しているマサさんへと
悔しさを滲ませた瞳で見上げる
しかしその綺麗な紺藍の瞳で見つめられ
柔らかく口角の上がった口元から私の名前が紡がれると
何も言えず全てを許してしまう
(…悔しい)
私はこの人の笑った顔に弱いみたいだ
「…そういえば、風舞弓道部にいたってことは…
弓…続けてるってことだよね。嬉しい。」
再会した時、彼が弓を置いていたら…そんな不安がずっとあった
だから、彼がまだ弓道に関わってくれていることが嬉しくてたまらなかった
また一緒に引ける、またあの射が見られる、また、あの弦音が聞ける
嬉しい、ともう一度噛みしめるように呟き
顔をほころばせながらマサさんを見上げた
「ああ。理由は色々あるんだが…
Aが、俺の射を好きだって言ってくれたのが大きかったかな」
マサさんの言葉に少し驚きながらも
私は満面の笑みでこたえる
「マサさんが弓を続けてくれるなら何度だっていうよ。
マサさんの射が好き。ずっと見ていたい。悩んだり自信がなくなったらいつでも私を呼んで。
私は何度でも惜しみなくあなたに好きだと伝えるから」
「A…ありがとう。」
私たちは視線を絡ませ笑い合う
――――
幸せな時間はあっという間に過ぎるもので
そうこうしているうちに待たせているタクシーが見えてきた
乗り降りしやすいようおじいちゃんを助手席に座らせ
「マサさん、ありがとうございました。」
おじいちゃんを運んでくれたマサさんにお礼を言い
私は後部座席に乗り込む
が、思い出したように振返りマサさん見つめながらポツリと呟く
「あの…今夜行ってもいいかな」
マサさんは何を今更、と笑いながら私の頭を撫でてくれた
「いつも勝手に来るくせに。
いつでも来て構わない。待ってると言っただろ」
その答えに安心し、私はタクシーに目的地を告げ
笑顔でマサさんと別れた
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まんじゅう - 凄く面白いです！更新待ってます( *´꒳`* ) (12月30日 6時) (
レス) @page12 id: 2ede693103 (このIDを非表示/違反報告)
まま - マサさんの心情の表現もよかったし、続きめちゃくちゃ気になります！！ (2023年3月19日 0時) (レス) @page12 id: 21c8ee624a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さのすけ | 作者ホームページ：https://twitter.com/sanomasa0810
作成日時：2019年7月1日 1時
