ぎっくり腰 ページ1
その日私は、自分の所属しているサークル――弓道サークル――へ
久しぶりに顔を出す約束をしていた
マサさんと出会ってからは夜多ノ森弓道場で引くことが多く
めっきりサークルに顔を出す回数が減ってしまっていたのだ
同じサークル仲間で高校からの親友である紫水(しすい)に
そろそろ顔を出せと、半ば無理矢理約束させられてしまった
(やっと時間が出来たから、今日こそマサさんのところに行きたかったんだけどなぁ…)
何かとバタバタしていて、この一ヶ月一度もマサさんに会えていない
この間の新入生勧誘活動は、サークルへ顔を出したうちに含まれないらしい。
小さくため息をつき、親友に腕を引かれながら諦めて弓道場へ向かおうとしたその時
突然、軽快な電子音が響く
私のケータイが鳴っているようだ
あわてて鞄から取り出し画面を確認すると
そこにはおじいちゃんの名前が映し出されていた
この時間はまだ仕事中のはず
おじいちゃんは風舞高校という、自宅から車で10分程の距離にある学校で教師をしている
仕事中に電話が来るなんて何かあったのかもしれない
不安から逸る気持ちを抑え、しかし急いで電話に出る
「もしもし？おじいちゃん、何かあったの？」
「おおA、すまんのぉ…実はさっき、プリントを持ち上げようと踏ん張ったら
腰をやってしまってのう…、迎えに来てくれんか」
ほっほっほっ、と電話の向こうでおじいちゃんの笑い声がする
腰…
大事じゃなくてよかったと胸をなでおろす
「もう…気を付けてってあれ程言ってるのに…」
おじいちゃんは腰が悪く、もう癖になっているのだろう…しょっちゅうギックリ腰をしている
毎日耳にタコができるくらい
重い物は持たない・急に姿勢を変えない・無理な角度にならない…
色んな事を言い聞かせているのだけれど、あまり効果は見られない
「わかった。うん、場所は分かるから大丈夫だよ
まだ学校だから…1時間はかからないと思うけど、30分以上は確実にかかるからね。」
すぐ行くから、と電話を切り
先程とは別の意味で小さくため息をつく
「柴水…」
今まさに私をサークルまで引っ張っていこうとしていた目の前の親友へと
懇願のまなざしを向ける
「………聞いてたよ。まったく」
ショートカットの金髪をかきあげ
しょうがないなぁ、と困ったように眉を下げ優しく笑ってくれる
「次は逃がさないからね」
「うん、ありがとう！」
私は寛容な親友に感謝しつつ、急ぎ足で駅へと向かう
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まんじゅう - 凄く面白いです！更新待ってます( *´꒳`* ) (12月30日 6時) (
レス) @page12 id: 2ede693103 (このIDを非表示/違反報告)
まま - マサさんの心情の表現もよかったし、続きめちゃくちゃ気になります！！ (2023年3月19日 0時) (レス) @page12 id: 21c8ee624a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さのすけ | 作者ホームページ：https://twitter.com/sanomasa0810
作成日時：2019年7月1日 1時
