サイケデリック・アップルパイ　　

取引 ページ9

少女は電話機を置くと、目の前に立っている人物に笑いかけた。

「ずいぶんと姑息な真似をしますね、盗聴器だなんて」
「あら、必要な工作よ」
「まぁ、そうとも言えない事もないですが」
「ところで」少女が口を開いた。「例の件、どうなってるかしら」
「滞りなく、進んでおります」
「そう」

返事に満足したのか、少女はその年代にしては妙に大人びている声を一層低くした。

「しかし紛らわしいですね、その声」
「紛らわしいのは声じゃなくて顔よ」
「そりゃ失礼」

部屋を立ち去ろうとする相手に、少女が後ろから言った。

「あなたにも近いうち、それなりの地位をあげなくちゃね」
「そう言っていただけるのなら、こちらからも引き続き『林檎』に関する情報をお伝えしましょう」

互いの顔も分からないほどの強い西日が差しているこの豪華な部屋に二人の笑い声が響き、床にサングラスが落ちる様が何とも異様で不気味だった。

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