翔先生。 ページ18
正直、学習会の内容なんてほとんど頭に入って来なくて、隣にいる櫻井先生のメモを取るペンの音が気になって仕方が無かった。
約２時間の学習会が終わって、参加者がゾロゾロと帰り始める。
私達も会場を出ようとした時、“翔先生!!”と櫻井先生を呼ぶ声がした。
その声はさっきの女性で、白いシフォンのスカートの裾をひらひらとさせながら櫻井先生に近付いてきた。
「お疲れ様でした。」
翔「お疲れ様。」
ほら、その女性を見る櫻井先生の顔が優しくなった。
「翔先生、すこしお時間ありますか？」
翔「…ゴメン、今日はうちのナースと一緒に来てるから。」
女性の視線が私に移ったタイミングで会釈をする。
「そうなんですか…残念。久しぶりに翔先生と会えたから、もっとお話ししたかったのにな…」
そう言って、私の事をチラッと見た視線がチクッと刺さる。
A「櫻井先生、私ちょっとお手洗いに行ってきます。」
翔「えっ…あっ・・・。」
時間を少しでも作れたら…という思いと、その場にいたくなくてトイレに向かった。
パウダールームで直さなくても十分なお化粧を直して、少しだけスマホをいじってからトイレを出ると、さっきいた所の近くの柱に寄りかかる櫻井先生の姿があった。
櫻井先生は何故か一人で、私の姿を見つけると柱から離れて私に近づいてくる。
A「…すみません。お待たせしました。」
翔「あっ…ううん。こっちこそゴメンね。」
何だか気まずい空気が流れて、それから無言のまま車に戻った。
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作者名：晴日。 | 作成日時：2012年12月18日 23時
