缶コーヒー。 ページ16
そして学習会当日。
黒のツインニットにグレーのスカート、黒のパンプス。
そしてベージュのトレンチコートを羽織る。
髪は病院では出来ないダウンスタイルにした。
櫻井先生との約束の時間まではあと３０分もある。
家からゆっくり歩いても１０分はかからない。
少し早いけど、櫻井先生を待たせる訳にはいかないと思い、家を出た。
途中でコンビニによって、そろそろ最寄駅…そんな時、“Aちゃん”と声を掛けられた。
それは櫻井先生で、車の窓を開けて私に向かって手を振っていた。
櫻井先生は、サッと車から降りて私の元へ小走りで来てくれた。
A「おはようございます。」
翔「おはよう。」
A「すみません、お待たせしてしまいましたよね。」
翔「全然。俺が早く着き過ぎちゃっただけ。」
“さ、乗って？”そう言って、助手席のドアを開けてエスコートしてくれる櫻井先生。
A「ありがとうございます。」
こんなお姫様みたいな扱いをされるのは久しぶりで、今日の目的が学習会って事を忘れてしまいそうだった。
翔「ドア、閉めるよ。」
優しく閉められたドアから、櫻井先生の優しさが伝わる。
運転席に乗り込んでシートベルトを締める姿がスマートで、鼓動が速くなるのを感じた。
翔「会場までは３０分位だから。」
そう言って車を発進させる櫻井先生。
A「櫻井先生、良かったらコレ飲んで下さい。」
来る途中に買ったブラック缶コーヒー。
翔「えっ、ありがとう。遠慮なく頂きます。」
プシュ、とプルタブを開けて櫻井先生に手渡して、自分もミルクティーを飲む。
翔「うまっ、染みる〜〜〜!!」
そう言いながら、缶コーヒーを飲む櫻井先生の横顔が幸せそうで、コンビニの缶コーヒー一つでこんなに喜んでもらえて嬉しくなった。
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作者名：晴日。 | 作成日時：2012年12月18日 23時
