ところで、ジュピター(赤)

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「雨っすね」



「折り畳み傘あるよ。出すね」



カバンから折り畳み傘を出して
広げると渋谷くんが持ち手をすっと奪った。



「僕持ちます」




「ありがとう…」




「あの、もっとくっついてくれないと…濡れますよ？」




「あっ、ごめん」





「…梅雨も悪くないっすね」






「そうだね」






。

次の日は梅雨時期でも晴れた日で。

仕事終わりに渋谷くんと待ち合わせして
TOHOシネマズへ歩いて向かった。


1人じゃなかなかこっち方面(歌舞伎町)は来ないからなんだかキョロキョロしちゃって。


だいぶ手を繋ぐのにも慣れた。





「映画19時からっすね」



「先に軽く何か食べる？」



「いいっすね！」



TOHOシネマズすぐ近くの
ルノアールに入った。



「あ、サンドイッチかフレンチトースト悩む」



「じゃあ1個ずつ頼みます？」



「そうだね、そうしよ」



渋谷くんはアメリカン。
私は宇治抹茶ミルク。

フレンチトーストとミックスサンドを頼んだ。




「タバコ吸ってもいいすか？」




「え、聞かなくても吸っていいのに」





「いや、Aさん嫌がるかなって…」





「大丈夫だよ。玉ちゃんも吸うし、そんなに気にしない」




「助かります」



咥えタバコでよくある百円ライターで火をつけて。


あまり知らない渋谷くん。



「ふーーーー」



「…タバコたくさん吸う？」



「1日1箱ぐらいっすね」



「へぇ」




「昔はもっと吸うてて。これでも減った方なんすよ」



「そうなんだ」




たわいのない会話が続く。

ひとつひとつが

私にとって渋谷くんを知るための魔法の呪文で。


なんだか心地良い。





「どうしました？」




「え？」




「いや、笑ってるから…そんなオモロイ話やったかなぁって」





「…渋谷くんの話聞いてるの楽しくて」





「ほんまですか？」





「うん」





「ははっ。照れるな…なんか」






時間になり映画館へ向かう。


まぁまぁな混み具合で
私の隣が男の人だったから
渋谷くんが席を変わってと
さりげなく言ってきた。


さっき軽く食べたから
飲み物だけ買って。





「これ、渋谷くんの」


「ありがとうございます」




そっと指が触れて
心臓がぐっと痛くなった。

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