スパンコールな波際で。(緑)

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たーくんに"すぐ彼氏出来るやろ"と言われハッとなった。




そうなんだけど。

そうなんだけどな。


1月はあっという間に過ぎて
2月になると専門学校でも話題はバレンタインに。


周りの女子が
どこでチョコを買うかとか
作るかとか、、、




告白するとか。




毎年彼氏がいたあたしは
本命のチョコとお父さん、そしてたーくんにあげていた。


今年はどうしようか…。




デパートのチョコ催事場。
なんでこんなに混んでるの、とブツブツ文句を言いつつ人を掻き分けてショーケースの前に辿り着く。




………何あげよう。


……別にチョコじゃなくても？




……あたし、何こんなに悩んでるんだろ。





結局、お父さんとたーくんに
同じカカオ多めのビターチョコを買った。





今年のバレンタインは土曜日。



アルバイトは夜だけ。
お父さんはゴルフ。
お母さんはパートに出掛けていない。




コン、コンと
窓から音がして
カーテンを開けて見てみると
たーくんがそっち行ってええ？と窓から身を乗り出していた。




『ちょ、何して？』



「ええから、そっち行ってから説明する」




手を伸ばして
ウチの家の窓に飛び込んで
部屋に入ってきたジャージ姿のたーくん。





『んで、説明してくれる？』



「今日バレンタインやん？学校の女の子たちが玄関先におって出られへんねん」




『は？』



南側の窓からたーくんの家を覗いてみると
何人もの女の子たちが玄関先で張っていた。



『貰えば帰ってくれるんじゃないの？』




「いらんし。貰ったら返さなあかんし、嫌や」




あたしのベッドにぽふっとダイブして
スマホを見るたーくん。



「朝からLINE鳴りっぱなしやし、うざいねんてーー」




『出掛ける予定あるの？』




「無いよ。でも家におったらピンポン鳴りっぱなしで嫌やねん」





『そっか…モテる男は辛いね』




「何やろ、俺なんかのどこがええか分からへんわ」




『…顔？』




「顔…だれも中身なんて見てくれへん」




『…たーくんは優しいし、目標あったらそこに向かって一生懸命だし、ご飯美味しそうに食べるし、ゲーム上手いし、お父さんとお母さんのこと大事にしてるし』




「…Aちゃん」






『いいとこいっぱいあるよ』




そんな時我が家のインターフォンが鳴った。

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