『Library』A ページ36
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高校3年生。受験生まっしぐらだった私は、学校から家までの定期区間にあった大きな図書館を、自分の勉強場所として使ってた。
大きな図書館だから、本棚も机も、人も。
沢山並んでて、沢山いて。
その大勢の中のひとりを、私は受験勉強のご褒美にしてた。
その人のおかげで、私は図書館で勉強する癖がついたし、行けばその人に会える。…会えるっていうか、話したことはなかったけど。
大学1年生。晴れて、私は大学生になった。受験勉強の地獄から解放された。だけど、その人に会いに、私はまた図書館に行く。
大学生になって、活動時間が変わったから、あまり会えなくなっちゃうかな…って思ってたけど。その人は、今の時間帯の方がよく会える。…こっちが一方的に見てるだけだけど。
その人は本を読む時、よく眼鏡をかけてた。
高い所にある本も、スッ…と簡単に取れちゃう背の高さ。
スタイルもよくて、伏し目で本を読む姿は、モデルさんのようだった。
大学生活にも慣れた、梅雨入り前の晴れた日。
いつものように、あの人いるかな……と思いながら図書館に行った。
そういえば、この間友達に勧められた小説があったな……と思って、小説コーナーを歩いて回る。
あ。あった。
有名な作家さんだから、本と本の間にラミネートされた名前の紙が目印に挟んである。
「…高い」
なんで、有名な作家さんの本をあんな高いところに置くんだろう。
……じゃなくて、私がチビなだけ。女性の平均的な身長にも満たない私の背。
「…あれ？」
いつもここら辺にある台がない。
少し歩いて探すと、あった。
……あった。その人も、居た……。
その人が立ってるすぐ隣に台が置いてあって、すいません……と言いながら台を持つ。
お。初めて目が合った。
少し口角が上がって、すぐ本に視線はもどる。
見ちゃった……あの人の目。
何歳くらいの人なんだろう。すごく大人っぽく見える。
台を持って戻った。その本棚の前に置いて登って手を伸ばしたら、視界に大きな手が入ってきた。
ビクッとして、その手の主を見ると、その人だった。
フフッ、と笑ったその人は本を持って、これ？と小声でコソッと訊いてきた。
「あ…そうです…ありがと…ございます」
「いえいえ」
笑って、私の後ろを歩いて行った。
……何あの、笑顔…初めて見た…。
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さんご(プロフ) - しおりさん» はじめまして、しおりさん。コメントありがとうございます。そんなこと言って頂けるなんて、もう嬉しい限りです(笑)こちらこそありがとうございます(´ω｀) (2019年9月21日 12時) (
レス) id: e1b1cf4c3f (このIDを非表示/違反報告)
しおり(プロフ) - はじめまして。どのお話も優しくて、心が温かくなりました。さんごさんの丁寧な言葉の紡ぎかた大好きです。多分何度も読みに来ちゃうやつだ(^^)ありがとうございます。 (2019年9月21日 7時) (レス) id: 072c120661 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さんご | 作成日時：2019年8月15日 16時
