#2 ページ28
.
「Aさーん！それ！取って！」
高校1年の体育祭。二宮くんはその実行委員で、私は得点係だった。
私の近くに三角コーンがあって、それを取ってと呼んできたのが二宮くんだった。その時初めて彼を知って、同時に一目惚れした。
それから目で追うようになれば、彼はいつもだるそうで猫背で。どう見たって体育会系には見えない。どうして実行委員なんかなったんだろう。そんな風に、その時は考えてたけれど、訊いたらあれはじゃんけんで負けて、やむを得ずなったらしい。
私もそれだった。クラスから何人か、なんとか係ってのを出さなきゃならなくて、うちのクラスの実行委員はめちゃくちゃ体育会系の相葉くんだった。そういえば、その代の実行委員はイケメン揃いだって話題だった。
……そういえば、あの時なんで私の名前を知ってたんだろう。
そんな考えが、体育祭の日に過ぎった。馬鹿な私は少し期待したけど、ほかの実行委員に聞いてみたら、彼らは係の名簿を持ってるみたいだった。そりゃ知ってるわ。と自分で自分に突っ込んで落ち込んだ。
三角コーンを取って、と言われ、私はそれを持って彼に渡した…だけ。それだけで、覚えてくれてたなんてビックリした。でも彼は、名前を覚えるのが得意だと有名だったらしい。私の期待は大学になってもかき消されてしまった。
私たちの大学は、私たちの高校よりもだいぶ離れたところにあって。お互いに一人暮らしだった。
夜一人でゲームしてると、時たま彼からゲームのことで電話がかかってくることがある。
どれだけゲームに時間をかけているんだろう。女子の中で私は相当なゲーマー扱いをされてたけれど、私なんて虫けらレベルで二宮くんはゲーマーだ。
「今、どこにいる？」
「レベル？」
「そう」
「157」
このレベルは、普通から見ても相当な高さ。だけど二宮くんは291にいると言った。
「早く追いついてきてよー」
「無理に決まってるでしょ(笑)」
「そろそろAと一緒に戦いたいんだけどな」
「どうせ私がすぐ死んで、バカにしてくるんでしょ」
「そりゃあね」
こういうゲームで二宮くんに勝つのは無理だ。それを彼も分かっているから、めちゃくちゃバカにしてくる。でもそれも楽しい、と思ってる自分がMで気持ち悪い。
そんな日々が2年続いた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 482人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さんご(プロフ) - しおりさん» はじめまして、しおりさん。コメントありがとうございます。そんなこと言って頂けるなんて、もう嬉しい限りです(笑)こちらこそありがとうございます(´ω｀) (2019年9月21日 12時) (
レス) id: e1b1cf4c3f (このIDを非表示/違反報告)
しおり(プロフ) - はじめまして。どのお話も優しくて、心が温かくなりました。さんごさんの丁寧な言葉の紡ぎかた大好きです。多分何度も読みに来ちゃうやつだ(^^)ありがとうございます。 (2019年9月21日 7時) (レス) id: 072c120661 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さんご | 作成日時：2019年8月15日 16時
