第47話 ページ7
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「この度は誠にありがとうございました」
「泪、かしこまりすぎじゃないかな?」
『ほら、顔を上げて』と優しく促す寂雷さんの言う通り顔を上げると、優しい笑みと目が合った。
ここはシンジュク中央病院。
私は、先日の誘拐の件で寂雷さんのもとを訪れていた。
「元気そうでよかった」
「元々、ヒプノシスマ イクには耐性がありましたからね」
『The Dirty Dawg時代のおかげ!』と言うと、寂雷さん聖母のように微笑んだ後にキョロキョロと周りを見回した。
「左馬刻くんは一緒に来てないのかい?」
「あ、車で待ってます。院内の人を怯えさせちゃわないように、気を使ってくれてるんだと思います」
「なるほどね」
顎に手を当てながら頷いた寂雷さんが、不意に私の左手に視線を落とす。
「ああ、私としたことが言い忘れてしまったね」
優しい笑顔と、落ち着く声。
寂雷さんの患者さんたちって、幸せだと思うな。
「おめでとう。左馬刻くんと幸せにね」
「はい、ありがとうございます」
十分すぎる言葉に頷くと、寂雷さんは満足そうに微笑んだ。
「今度、何かお祝いの品を送らせてくれるかな?」
「いえいえ…っ、さすがにそこまでしてもらうわけには…」
「私にも、君たちを祝わせてほしいんだ」
目尻を下げてそう言う寂雷さんに、私は昔から弱い。
「寂雷さん、その顔ズルいです…」
「え?な、何がだい?」
「なんでもないです…」
素でそんな表情をしてしまう寂雷さんは、本当にズルい。
「泪?」
寂雷さんの罪深さに顔を覆いながら俯くと、優しい声と共に顔を覗きこまれた。
私は心配させまいと思い切り顔を起こして、小さく唸る。
「う〜ん、でもさすがにそこまでしてもらうわけにも…」
「でも、お祝いしないわけにもいかないだろう?」
ごもっともです、寂雷さん。
「あ」
「なんだい?」
そう思ったところで、一つ閃いた。
私はとびきりの笑顔を向ける。
「じゃあ、一つお願いがあるんですけど…」
まるで、内緒話をする子供のように、寂雷さんの耳元に唇を寄せた。
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トーマ - ついに完結してしまった…これからも幸せでいてほしいですね〜もう一回全部読んできます、神作品をありがとうございました!!煉くんかわ…かっこいい、女の子の扱い方うまそう… 次の作品もたのしみにしてます! (2019年1月26日 9時) (レス) id: 886f42f433 (このIDを非表示/違反報告)
カコ - 完結と同時にコメントしたかった・・・こんな幸せな作品をありがとうございました。他にもいろいろ言いたいことはあるけど、とても言い尽せそうにありません。なので、もう一度言わせてください。ありがとうございました。 (2019年1月25日 0時) (レス) id: 7a3bf8ffac (このIDを非表示/違反報告)
うすしおタルト(プロフ) - 花蓮さん» ありがとうございます!!よかったです〜!たくさん読み返して頂けて幸せです!! (2019年1月22日 20時) (レス) id: 9f30b37ea7 (このIDを非表示/違反報告)
うすしおタルト(プロフ) - 麗華さん» ありがとうございます!!想像の斜め上行けましたかっ!?楽しんで頂けたのなら幸いです!! (2019年1月22日 20時) (レス) id: 9f30b37ea7 (このIDを非表示/違反報告)
うすしおタルト(プロフ) - 魔王さん» ありがとうございます!!素敵だなんてそんな…っ!たくさん読み返して頂けたら幸いです!! (2019年1月22日 20時) (レス) id: 9f30b37ea7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:うすしおタルト | 作成日時:2018年11月28日 19時