最終話 ページ50
どうしたって月日は巡るもので、あれだけ可愛かった碧棺煉も、高校生になる頃には随分と口が達者になってしまった。
「母さんは今日も美人だね」
「…おはよう、煉」
左馬刻に似たのか、あまりにも端正な顔立ちに育ったわが息子のその一言は、心臓に悪い。
「私、もう三十になるんだけど…」
「ん?年齢なんて関係ないよ。母さんは美人だから美人って言ってるだけ」
『ね?』と甘く微笑まれれば、昔煉が『大きくなったら母さんと結婚する!』と無垢な笑顔で言ってくれたことを思い出す。
今はそんな可愛いものじゃないけど。
清々しいくらいの笑顔に押されて、『そっか』と頷きそうになれば、酷く逞しい腕に捕らわれる。
「オイ煉。テメェ朝っぱらから誰のオンナ口説いてんだ?あ"あ?」
「嫌だなあ、父さん。『父さんのオンナ』じゃなくて『僕の母さん』なんだけど」
「はあ…」
始まりました、第二百三十五次世界大戦。
毎日変なマ ウントを取る親子に思わず溜め息が出る。
さすがヤクザとその息子。
顔面が整ってるのにめっちゃ怖い。
そんな二人の顔を見てから、私を抱き締める人物の腕にそっと触れる。
「左馬刻、喧嘩しない。煉、学校行く時間でしょう?」
極力二人を刺激しないようにそう言えば、後ろから舌打ちと、正面から『仕方ないなあ』なんて声が聞こえてくる。
「今日も母さんに負けてあげる。父さんに負けたわけじゃないからね」
「一言多いんだよガキ。あんまりナ マ 言ってるとドタ マ かち割ンぞ」
「左馬刻」
咎めるようにそう言えば、左馬刻は途端に大人しくなる。
「煉も。もう行かないと間に合わなくなるよ」
「うん、行ってきます」
爽やかな笑顔の息子に手を振れば、その姿は玄関へと消えていった。
やっと一安心、と息を吐こうとすれば首筋に甘い痛みが走る。
「泪…」
「ちょ…っ、左馬、刻…」
「うるせえ、黙って付けられてろ」
首筋にキスマークが付けられる感覚がくすぐったい。
「煉に嫉妬ですか?」
「…悪いかよ」
「ううん、悪くない」
そう言えば、左馬刻の微笑む気配がした。
さて、今日も今日とて、
碧棺左馬刻の寵愛を受ける。
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トーマ - ついに完結してしまった…これからも幸せでいてほしいですね〜もう一回全部読んできます、神作品をありがとうございました!!煉くんかわ…かっこいい、女の子の扱い方うまそう… 次の作品もたのしみにしてます! (2019年1月26日 9時) (レス) id: 886f42f433 (このIDを非表示/違反報告)
カコ - 完結と同時にコメントしたかった・・・こんな幸せな作品をありがとうございました。他にもいろいろ言いたいことはあるけど、とても言い尽せそうにありません。なので、もう一度言わせてください。ありがとうございました。 (2019年1月25日 0時) (レス) id: 7a3bf8ffac (このIDを非表示/違反報告)
うすしおタルト(プロフ) - 花蓮さん» ありがとうございます!!よかったです〜!たくさん読み返して頂けて幸せです!! (2019年1月22日 20時) (レス) id: 9f30b37ea7 (このIDを非表示/違反報告)
うすしおタルト(プロフ) - 麗華さん» ありがとうございます!!想像の斜め上行けましたかっ!?楽しんで頂けたのなら幸いです!! (2019年1月22日 20時) (レス) id: 9f30b37ea7 (このIDを非表示/違反報告)
うすしおタルト(プロフ) - 魔王さん» ありがとうございます!!素敵だなんてそんな…っ!たくさん読み返して頂けたら幸いです!! (2019年1月22日 20時) (レス) id: 9f30b37ea7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:うすしおタルト | 作成日時:2018年11月28日 19時