第75話 ページ35
左馬刻との日々は、信じられないほど甘さを増していく。
「泪…、行くな…」
「ん"んっ」
『優しくする』と『甘え』を履き違えたような左馬刻に、思わず堪えきれない心の声が零れる。
朝八時。
ここはヨコハマ・ディビジョン。
「かわ…、じゃなくて。左馬刻、ご飯できたよ」
「あと、五分…」
「いくら可愛くてもそれはダメ」
「かわいい…？」
ベッドから頭だけを覗かせて小首を傾げる左馬刻は、未だ目の焦点が合っていない。
随分と可愛らしい左馬刻にそう言うと、薄い唇が開かれる。
「テメェの方が、かわいーだろ…」
「…っ！」
本当にこの男は…！
焦点の合ってないトロンとした瞳で、寝起きの掠れた声でそう言われれば心臓はぎゅっと締め付けられる。
左馬刻には、己の顔の良さを把握してもらわねば。
私はときめきに震える体を叱咤して、左馬刻の頬を引っ張る。
「そんなこと言ってもダメだから！起きる！」
「い"…っ、ででで！本気で引っ張ることねえだろ！」
「知らない！起きない左馬刻が悪い！」
私は半ば逆ギレの状態でキッチンへ戻る。
ああ、もう。
あんなの反則でしょ。
あんな、硝子細工を扱うような優しい声でそんなこと言われたら誰だってときめかないわけがない。
ぐんっと体温が上がる。
「は…っ、あっつ…」
熱を持ち始めた顔をパタパタと仰ぐと、左馬刻がイスに座る音がした。
「あ、今お茶持ってく」
「おー」
間延びした返事のあとに聞こえる『いただきます』と言う声に目を細めると、ものすごい力に腕を引かれた。
「え…、うわ…っ」
思わずよろけそうになると、白くて逞しい腕に抱き留められる。
「あ、ごめ…」
「喋んな」
左馬刻はそれだけ言うと、私を横抱きにして寝室へ入る。
「え、ちょ…、ご飯…」
「メシなら食う。だから寝とけ」
左馬刻はそれだけ言って、私の体をベッドに沈める。
言葉は少しだけ焦りを含んでいて雑なのに、触れる腕は優しい。
その優しさに溺れていると、優しい手が頭を撫でる。
「少し待ってろ、泪」
私は、左馬刻のその言葉の意味をちゃんと理解しないまま、瞼を閉じた。
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トーマ - ついに完結してしまった…これからも幸せでいてほしいですね〜もう一回全部読んできます、神作品をありがとうございました！！煉くんかわ…かっこいい、女の子の扱い方うまそう… 次の作品もたのしみにしてます！ (2019年1月26日 9時) (
レス) id: 886f42f433 (このIDを非表示/違反報告)
カコ - 完結と同時にコメントしたかった・・・こんな幸せな作品をありがとうございました。他にもいろいろ言いたいことはあるけど、とても言い尽せそうにありません。なので、もう一度言わせてください。ありがとうございました。 (2019年1月25日 0時) (レス) id: 7a3bf8ffac (このIDを非表示/違反報告)
うすしおタルト(プロフ) - 花蓮さん» ありがとうございます！！よかったです〜！たくさん読み返して頂けて幸せです！！ (2019年1月22日 20時) (レス) id: 9f30b37ea7 (このIDを非表示/違反報告)
うすしおタルト(プロフ) - 麗華さん» ありがとうございます！！想像の斜め上行けましたかっ！？楽しんで頂けたのなら幸いです！！ (2019年1月22日 20時) (レス) id: 9f30b37ea7 (このIDを非表示/違反報告)
うすしおタルト(プロフ) - 魔王さん» ありがとうございます！！素敵だなんてそんな…っ！たくさん読み返して頂けたら幸いです！！ (2019年1月22日 20時) (レス) id: 9f30b37ea7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：うすしおタルト | 作成日時：2018年11月28日 19時
