第71話(しらすの丼子さんリク) ページ31
.
「ん〜、さむ…」
毎度お決まりのセリフを吐いて、ベッドから起き上がる。
朝七時。
冷房が効き、カーテンが締め切られたこの部屋では、その明るささえ届かない。
シーツを出来るだけ手繰り寄せ暖を取ろうとすると、隣の白い塊が身じろいだ。
「あ」
起こしてしまった。
まずい。
咄嗟にそう思うも、かと言ってこの状況から脱するべくベッドから逃げようものなら、確実に殺人鬼の目をした左馬刻に追いかけられるという鬼ごっこが始まってしまう。
厳密に言えば閻魔ごっこだ、アレは。
いや、実際そんなことはどうでもよくて。
今はとりあえず、100%不機嫌な左馬刻を起こしてしまった自分を律しなきゃと思ったところで、体を白い腕に引かれた。
普段ならなんてことないその動作も、『寝起き』というワードを付け加えるだけで死へのカウントダウンに思える。
私を捕まえた腕は、さらに力を込めてその肢体の中へ閉じ込める。
「う、わ…」
突然バランスが崩れ声を発するも、それは真っ白い肌に飲み込まれていく。
寝る時も服を着ろ。
胸の中でそう悪態を吐いてみるものの、口になんて出せるわけがなくて口を噤んだ時、
「…はよ」
「………え?」
寝起きの左馬刻とは思えないほどの柔らかな声が鼓膜を揺らした。
見上げた瞳は慈愛に満ちているようで、気が抜けてしまう。
「あ…?『え?』って、ンだよ…」
「あ、いや…」
舌っ足らずな声に心臓がキュンと鳴る。
「さ、左馬刻が怖くない…」
「…喧嘩売ってんのか?」
ドスの効いた声を出しているのに私を抱き締める腕は酷く優しい。
絶対『ドタマかち割るぞコース』かと思ってたのに。
「テメェが、もっと優しくしろ、つったンだろうが…」
そんなことを思っていると聞こえてきた声。
それ、
「お、覚えてたの?」
「…おう」
掠れた声が体をくすぐる。
もどかしい、愛おしい。
幸せだ。
「ふふっ」
「…ンで笑ってんだよ」
「ん〜、内緒」
「はあ?」
聖夜明けの微睡みの中で、夢のような時間を。
第72話(しらすの丼子さんリク)→←第70話(白鶴さんリク)
1485人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ヒプノシスマイク」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
トーマ - ついに完結してしまった…これからも幸せでいてほしいですね〜もう一回全部読んできます、神作品をありがとうございました!!煉くんかわ…かっこいい、女の子の扱い方うまそう… 次の作品もたのしみにしてます! (2019年1月26日 9時) (レス) id: 886f42f433 (このIDを非表示/違反報告)
カコ - 完結と同時にコメントしたかった・・・こんな幸せな作品をありがとうございました。他にもいろいろ言いたいことはあるけど、とても言い尽せそうにありません。なので、もう一度言わせてください。ありがとうございました。 (2019年1月25日 0時) (レス) id: 7a3bf8ffac (このIDを非表示/違反報告)
うすしおタルト(プロフ) - 花蓮さん» ありがとうございます!!よかったです〜!たくさん読み返して頂けて幸せです!! (2019年1月22日 20時) (レス) id: 9f30b37ea7 (このIDを非表示/違反報告)
うすしおタルト(プロフ) - 麗華さん» ありがとうございます!!想像の斜め上行けましたかっ!?楽しんで頂けたのなら幸いです!! (2019年1月22日 20時) (レス) id: 9f30b37ea7 (このIDを非表示/違反報告)
うすしおタルト(プロフ) - 魔王さん» ありがとうございます!!素敵だなんてそんな…っ!たくさん読み返して頂けたら幸いです!! (2019年1月22日 20時) (レス) id: 9f30b37ea7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:うすしおタルト | 作成日時:2018年11月28日 19時