狙われちゃんと不死川さん 《不死川実弥》

＊置き手紙は。（実弥さんside） ページ9

「何勝手なことしてんだよォ…！」


俺は呟くと、手紙をぐしゃっと握りつぶし走り出した。


脳裏に、ふとAの顔がよぎる。


寂しそうに笑った顔、不満そうに唇をとんがらせたり、花が咲いたように微笑んだり。
泣きながら愚痴を言い、嬉しそうにはにかんだ時もあったよなァ…。


なァ、戻って来いよ。
テメェの事情なんざ知らねェ、知りてェとも思わねェ。


何も言わずにさよならだァ…？
ふざけんな、それで諦められるとでも思ってんのかァ


こういう時だけ、足が上手く動かない。


動け、もっと早く。


俺宛の手紙、ふやけてるところがいっぱいあったのは何でだよォ？


泣いてたんだろォ、A


離れたくもねェ癖に強がりやがって……何やってんだよォ


俺の知らねェ内に一人で抱え込んで、結局逃げて。
何も解決できてねェじゃねえか。当たり前だァ


人間は弱ぇから、一人で何てできるわけねェんだよA。
聞いてんのかァ…


今も泣いてるんだろ、どっかで一人で。



―実弥へ―


実弥、突然いなくなってごめんなさい。


でも、これは私が決めたことだから。追いかけてこないで。


嫌なの。実弥といる日々が大嫌いだった。


嫌い、実弥なんて―大嫌いだよ。


しのぶさんもカナヲもアオイもなほもすみもきよも嫌い。


みんな嫌いだから逃げたんだよ、私は。


私の意思で決めたことなの、全て。他の理由なんてないから絶対。


嘘じゃないよ、本当に。


さよなら


―Aより―



見え見えの嘘ばっかじゃねェか。嘘つくの下手すぎるんだよ、テメェは。


知ってるよ、他の理由があるんだろォA。


そりゃあ……少なからずテメェが話してた奴らに関係あるんだろォなァ


追いかけてこないで？いいや俺は追いかける。


テメェが逃げる限り、俺は追う。


これは俺が決めたことだから。口は挟むなよォA

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