*何処かへ。 ページ8
草鞋を履き、そっと玄関の扉を開けた。
音は立たず、ホッとして私は蝶屋敷の外に出る。
「さようなら…」
ボソッと呟くと、私はくるりと背を向けて走り出した。
夜は肌寒く、儚げに散りゆく夜桜がとても綺麗だった。
―――実弥と、見たかった―――
そんな思いが心に渦巻き、私の計画を鈍らせる。
こんなこと思っちゃいけない。この恋心は切り捨てないと……、いけ、ない…のに。
頭で分かってはいるのに、心はまだ反対しているみたいだ。
足の動くペースがだんだんとゆっくりになり、目からは私の情けなさの結晶が溢れだす。
私は、弱い。とても、弱い人間だ。泣いてばかりだ、実弥と出会ってから泣いてばかり。
実弥への愛と哀を、「憎悪」に変えることは、不可能なのだろうか。
「ううん…できる」
そう、実弥と出会ってから私は実弥に恋をしてしまった。
そして、今も捨て切れられずにいる。
実弥が私を恋に陥れたから。実弥のせいだ…実弥の、せいなんだよ全部。
自分に思いこませろ。「実弥は悪いヤツ」だと、「実弥のことは大嫌い」だと。
実弥に罪をかぶせろ、実弥を嫌いになれ。そうしたら、捨てきれる。
それでも頭は思いこんでくれなかった。
それは、知っているから。
実弥が助けてくれた優しい人なんだと―――分かっているから。
足がふとまた動き出した。ねぇ、もうすぐ夜明けが来るねみんな。
実弥向けに書いたあの手紙を、今―――読んでいますか?
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ウォーターツリー(プロフ) - ストロベリームーンさん» 一応消したけど…一応ありがとう(?)笑 ※返信無しで大丈夫です (2020年8月13日 21時) (レス) id: 602bf9e950 (このIDを非表示/違反報告)
ストロベリームーン(プロフ) - ウォーターツリーさん» 一人で寂しく祝ってて悲しいね(*´・ω・)私が盛大に祝ってあげよう!.......かぁぁぁぁぁぁんけぇぇぇぇぇぇぇつぅぅぅぅぅ!おぉぉぉぉぉめぇぇぇぇぇでぇぇぇぇとぉぉぉぉぉぉぉうぅぅぅぅぅ!(遅れてめんご、だって通知来なかったんだもん。...ぴえん) (2020年8月11日 1時) (レス) id: 52d18f6c25 (このIDを非表示/違反報告)
ウォーターツリー(プロフ) - 自分完結おめでとう(何やってんだか) (2020年8月7日 15時) (レス) id: 602bf9e950 (このIDを非表示/違反報告)
ウォーターツリー(プロフ) - yssy4181yuukaさん» ありがとうございます!こんなありきたりなお話で感動して下さるなんて…(;_;)本当にありがとうございます!! (2020年8月6日 9時) (レス) id: 602bf9e950 (このIDを非表示/違反報告)
yssy4181yuuka(プロフ) - やばい泣いた (2020年8月6日 8時) (レス) id: 2a5f87979c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ウォーターツリー | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/JannethBas1/
作成日時:2020年3月25日 19時