狙われちゃんと不死川さん 《不死川実弥》

＊後悔ばかり。 ページ7

あれから、カナヲとは会話をしていない。
蝶屋敷のみんなとも、話をしていない。
実弥とも、会っていなかった。


声をかけられても、私は避けるように「無視」を決め込んでいた。
これ以上話をしていたら、離れづらくなってしまうから。実弥とは、特に。


箪笥から自分の服を取り出し、何着か選んで風呂敷に包む。
出て行く準備は、粗方終わっている。
みんなには、何一つ言っていない。言わない。最後まで、ずっと。


「もう夕暮れかー…」


今日の深夜、私は蝶屋敷を出る。こっそり、みんな寝ているうちに。
私には、後悔がありまくっている。


さよならをしないといけないのに、何も言わずに出て行くこと。


もっとみんなと遊んでおけばよかった。


もっとみんなと楽しくお喋りしておけばよかった。


もっと、もっと………


もっと…実弥と。


もっと実弥と出掛けたかった。もっと実弥と話したかった。もっと時間を共有したかった。


―――――――――――――――――


せめて、置き手紙だけは書いておこうか。そうしよう。


最後まで、心配かけてばかりだったなー…ごめんなさい、アオイ・カナヲ・しのぶさん達


もう二度と会うことはないよね、あるか。……いや、ない。


実弥、好きだったよ。大好きだったよ。沢山のありがとうを送るね。


ぽろぽろと、目から水滴がこぼれる。


とめどなく、何時間たってもそれは止まなかった。


嗚咽が出そうになるが、必死に堪えて唇をかみしめた。


胸が、キリキリと軋むように痛い。ドクドクと、波打つように鼓動が鳴っている。


喉が痛い。鼻も赤い。目元はこすれてる。拭いきれない涙。



今日は月が綺麗だね……いや綺麗「だったよ」、実弥

＊何処かへ。→←＊何にもないよ。

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す