狙われちゃんと不死川さん 《不死川実弥》

＊受け止めて。 ページ32

「A、気分どうだァ？」


実弥が花瓶をそこらの台に置き、尋ねる。
萎れることなくその花は綺麗に花を咲かせていた。


実弥は知らぬ間に水を替えてくれたのだろう。


私は布団の上で背を伸ばし微かに頬を上げて微笑む。


「うん、大丈夫。…元気って、言ったでしょ」


心の中で自分に呆れていた。


何処も元気じゃないし大丈夫なんて軽いものじゃない。
分かっているけど認めたくない気もあり、やっぱり教えられない。


好きな人に悲しい顔をされるのは辛い


自分が死ぬというよりも心苦しい気持ちになる。


日々隠し通すのも罪悪感が湧いて出てくる。
その度に深呼吸して、胸を落ち着かせるのだ。


「じゃァ庭も思いっきし駆け回れるんだよなァ？」


実弥は少し不機嫌そうに、ぶっきらぼうに私に手を差し伸べる。


…そんならやってみろ


と言われている気分だ。


私はぐ、と言葉に詰まる。
立てても足はふらふらだ。筋肉も衰え始めている。


息もしづらくなって来たし、とても駆け回れる体調では無い。


「……無理」「だろォな」


実弥は表情を少し和らげて手を下げた。
分かっているくせに何故、試すようなことをするのか。


「悪ィ、けどなァ………もうちっと、俺に頼ってくれねェかァ」


声を低くし少し小さく実弥が言った。
私の頬がぴくりと痙攣する。


頼りたい。全部話したい


＿＿＿それが出来ないから、苦しいのに


「テメェがんな元気じゃねェことくらい、誰でも分かるってのォ」


くしゃりと実弥は私の頭を掻き回した。
でも優しく、それでいて悔しそうに歯を食いしばりながら。


申し訳なさで涙が出そうだった。


震える唇で実弥に言う。


「…ごめん、ごめんなさいっ…！わた、しッ……！！」


病気で死ぬのに恋をしてしまってごめんなさい

心配と悲しい思いをさせてしまってごめんなさい

忘れちゃってごめんなさい

迷惑かけてごめんなさい

あなたが＿＿大好きで、、、ごめんなさい


止みそうにない私の涙。
震えて格段に体重を落とした体。


実弥が体を起こしているだけの私を、包み込むように抱きしめる。


ふわっと実弥の匂いがし、安堵感と悔しみがどっと胸を直撃する。
押し寄せる波のように強く強く…私をたたき打つようにして


「泣け泣けェ…全部、俺のとこに吐き出して良いからァ……！」


実弥の体の温度が優しく私を受け止めた。

＊無理だと。→←＊噛み締めて。

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