*昔は。 ページ21
彼は、優しく私の手を包み込んだ。
体格と強面な顔からは到底想像できないような、暖かいぬくもりと繋ぎ方だった。
実弥。
どこかで聞いたような名前だと感じた。
少しだけ興味が湧く。
それでいてどこか懐かしい雰囲気があった。
彼と会うのは、なぜか初めてじゃないような気がしてならない。
もどかしかった。どうしても思い出せない自分に嫌気が指す。
人に触れる、人に触れられるのは怖かった。
何よりも恐怖で絶望な行為だ。
いつも私は、暴力を振るわれていたから。
それなのに。それなのに、彼なら安心できる自分がいた。
誰かなんて知らない、会ったこともない、知り合いでもなんでもない。
_____ねぇ、あなたは誰?私の、私の知ってる人?ねぇ。ねぇ。
唇が震えて動かなかった。
目の前で幼い子供みたいにおはぎを食べる、傷だらけの男の人。
どうしても思い出せなくて、それでも他人だとは思えなくて。
鼻がツーンとなり、緩んだ目元から水滴がほろりと溢れる。
「実、弥。さ、さね……実ッ…み……つ"っ」
初めて?初めて会った彼に、私は異質な気持ちを抱いた。
この気持ちは何?……誰だ、この人は。
久しぶりに泣いた気がした。悲しくなんかないのに、ただ懐かしさでいっぱいなだけなのに。
「!…ん、どうしたァA。居るよ、俺は此処に居るからァ……!」
ずきん、と頭が痛む。
それと共にいつかあった記憶が巡る。
真夜中にそっと抜け出した、月を見て誰かに焦がれた、目を開けたら知らない天井。
蝶々の髪飾りを付けた女の子達、誰かに辛く当たってしまった日、荷物をまとめた日___
こんなに優しくされたのは初めてじゃない。
ずっと、ずーっと昔に…こうやって優しく手を取ってくれた人が居た
あぁ、、、、なのに、思い出せない
心配そうに私を見つめる、実弥と言う人。
あなたは、どこかで私と会ったことがあったのでしょうか?
130人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ウォーターツリー(プロフ) - ストロベリームーンさん» 一応消したけど…一応ありがとう(?)笑 ※返信無しで大丈夫です (2020年8月13日 21時) (レス) id: 602bf9e950 (このIDを非表示/違反報告)
ストロベリームーン(プロフ) - ウォーターツリーさん» 一人で寂しく祝ってて悲しいね(*´・ω・)私が盛大に祝ってあげよう!.......かぁぁぁぁぁぁんけぇぇぇぇぇぇぇつぅぅぅぅぅ!おぉぉぉぉぉめぇぇぇぇぇでぇぇぇぇとぉぉぉぉぉぉぉうぅぅぅぅぅ!(遅れてめんご、だって通知来なかったんだもん。...ぴえん) (2020年8月11日 1時) (レス) id: 52d18f6c25 (このIDを非表示/違反報告)
ウォーターツリー(プロフ) - 自分完結おめでとう(何やってんだか) (2020年8月7日 15時) (レス) id: 602bf9e950 (このIDを非表示/違反報告)
ウォーターツリー(プロフ) - yssy4181yuukaさん» ありがとうございます!こんなありきたりなお話で感動して下さるなんて…(;_;)本当にありがとうございます!! (2020年8月6日 9時) (レス) id: 602bf9e950 (このIDを非表示/違反報告)
yssy4181yuuka(プロフ) - やばい泣いた (2020年8月6日 8時) (レス) id: 2a5f87979c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ウォーターツリー | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/JannethBas1/
作成日時:2020年3月25日 19時