*風が。 ページ19
実弥side
頬に風が当たる。走っているせいなのか、その風で髪がなびく。
Aは目を見開きながら、必死に足を動かせていた。
後ろからは男たちが追いかけてくる。
糞、面倒くせェ…
俺はAの手をもっと強く握ると、一気に加速して胡蝶の屋敷を目指した。
ーーーーーーーーーーーーー
「おい胡蝶!開けろォ…!」
屋敷の戸をばんばんと力強くたたく。
早く、早く開けてくれェ……Aの手当をォ…
中々出てこない胡蝶。そりゃそうだ、真夜中だもんなァ
その間もAの体の傷からは血が溢れ、乾燥した切り傷からは肉が見えそうだった。
酷ェ、有様だァ……あの時、俺が。気付いてやれてたらァ
着物はボロで肌が見え見え。
「っ…ちっと待っとけェ」
俺は自分の羽織をAに着せると、服の布をちぎった。
Aの腕の傷に巻き、ぐっと口で引っ張る。
布に血が滲む。Aは何も言わなかった。
瞳が濁っていて、俺の好いてた女とはまるで違うみたいで。でも、確かにAで。
Aの冷めた肌に温もりを与えたくて、すっと頬に手を伸ばした。
「あら、不死川さん………そ、ちらの……お嬢さん、は…」
「話は後だァ!こいつの手当頼んだぞォ!」
胡蝶は信じられない、という顔で俺とAを見ながらも「は、はい!」と返事をした。
・
あの部屋で、あの布団で、Aは静かに眠りについた。
心地よさそうな吐息が聞こえる。
「不死川さん…この子は…」「あァ、間違いなく……Aだァ……!」
胡蝶が息を呑む。涙を流しながら、寝ているAの頭を撫でる。
数分後、胡蝶が目を伏せて俺に話し始めた。
「不死川さん、この子…Aは」
良くない報告だとは空気を読めば手にとって分かった。
受け止める覚悟はある。支えて行く覚悟も___
「Aは、感情を失っています」「っ……」
思い当たる節がいくつかあった
曇った瞳、俺が連れ出しても何も言わなかった、傷があっても痛そうにはしてなかった
ただ、じっと。大人しかった
「これから、戻る可能性はァ」「…まだ分かりません、厳しい状態だとは思います」
胡蝶も唇を噛んで悔しそうに俯く。声が震えていた。
「加えて一部の記憶障害、また傷も結構深いです。放置されていた為か菌も」
折角助け出したってのによォ…現実に変わりはねェのな
おォ、でもなァ___それでも、隣に居たいんだわァ
「いい、俺が面倒見てやらァ」
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ウォーターツリー(プロフ) - ストロベリームーンさん» 一応消したけど…一応ありがとう(?)笑 ※返信無しで大丈夫です (2020年8月13日 21時) (レス) id: 602bf9e950 (このIDを非表示/違反報告)
ストロベリームーン(プロフ) - ウォーターツリーさん» 一人で寂しく祝ってて悲しいね(*´・ω・)私が盛大に祝ってあげよう!.......かぁぁぁぁぁぁんけぇぇぇぇぇぇぇつぅぅぅぅぅ!おぉぉぉぉぉめぇぇぇぇぇでぇぇぇぇとぉぉぉぉぉぉぉうぅぅぅぅぅ!(遅れてめんご、だって通知来なかったんだもん。...ぴえん) (2020年8月11日 1時) (レス) id: 52d18f6c25 (このIDを非表示/違反報告)
ウォーターツリー(プロフ) - 自分完結おめでとう(何やってんだか) (2020年8月7日 15時) (レス) id: 602bf9e950 (このIDを非表示/違反報告)
ウォーターツリー(プロフ) - yssy4181yuukaさん» ありがとうございます!こんなありきたりなお話で感動して下さるなんて…(;_;)本当にありがとうございます!! (2020年8月6日 9時) (レス) id: 602bf9e950 (このIDを非表示/違反報告)
yssy4181yuuka(プロフ) - やばい泣いた (2020年8月6日 8時) (レス) id: 2a5f87979c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ウォーターツリー | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/JannethBas1/
作成日時:2020年3月25日 19時