*悪夢が。 ページ12
蝶屋敷から出てかれこれ一週間は立った。
「こ、こ…かぁー」
やっとのことで新しい街に着いた私は、少しゆっくり歩いていた。
足は再び痛くなって、正直もうヘロヘロだったが来たことのない街で頼れる人もいなかったので何をしようにも出来ることが無かった。
街の奥の方に行って岩場を見つけると、大きく出っ張った岩に座った。
奈菜宮さんの家で休んで以来の休みだった。
ふーっと大きな溜息を吐くと、風呂敷に詰め込んだお弁当を取り出した。
奈菜宮さんが去り際に渡してくれた、特製のお弁当だ。
久しぶりのちゃんとした御飯に、涙が出て来そうだった。
卵焼きや佃煮、おにぎりにたくあん等と色々と詰め込んであって、まるで奈菜宮さんの優しさを詰め込んだかのようなお弁当だった。
早速箸を伸ばそうとした―――、その時。
強く腕を掴まれた。疲れていることもあって反応も鈍く、振りほどくことも抵抗もできなかった。
喉もかれかけで声だってろくに出せやしなかった。
やっと実弥たちのことを振り切れて、新しい希望で満ちていた瞳は―――。
一瞬で絶望へと変わって暗く染まった。
目の前にいるのは、ニヤリと笑って私を「あの目」で見る――追手だった。
逃げられない、逃げられない。助けてくれる人もいない。
毎日の暴力、聞きなれた罵声や悪口。
任されごとで追われる日々、お風呂にも入れない、至福なんかない。
暗く染まった、絶望しか待っていないそんな毎日。
「お帰り、って言ってやろうかぁ…A」
罵声を飛ばし続ける、あの声だ。耳が痛くなる。頭痛が襲う。
私を蹴って面白そうに笑うあの声だ。
ここまで頑張ってきた意味は何なの?自分のやりきれなさに涙が溢れだす。
泣くことしかできない。抵抗も何もできない。させてくれやしない。
お先真っ暗だよ…実弥。
自分で捨てた恩人たち。都合よく私を助けてくれないかな。
自分で追いかけてこないでって言ったくせに、やっぱり助けてほしいなんて。
どこまで私は自分勝手なんだろう。
「さね……み」「誰も助けになんか来ないんだよ糞ガキが!!」
これが私の運命だったのなら、どうしてこうも神様は不公平な人生にするんだろう。
脳裏に浮かんだのは…両親の顔だけだった。
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ウォーターツリー(プロフ) - ストロベリームーンさん» 一応消したけど…一応ありがとう(?)笑 ※返信無しで大丈夫です (2020年8月13日 21時) (レス) id: 602bf9e950 (このIDを非表示/違反報告)
ストロベリームーン(プロフ) - ウォーターツリーさん» 一人で寂しく祝ってて悲しいね(*´・ω・)私が盛大に祝ってあげよう!.......かぁぁぁぁぁぁんけぇぇぇぇぇぇぇつぅぅぅぅぅ!おぉぉぉぉぉめぇぇぇぇぇでぇぇぇぇとぉぉぉぉぉぉぉうぅぅぅぅぅ!(遅れてめんご、だって通知来なかったんだもん。...ぴえん) (2020年8月11日 1時) (レス) id: 52d18f6c25 (このIDを非表示/違反報告)
ウォーターツリー(プロフ) - 自分完結おめでとう(何やってんだか) (2020年8月7日 15時) (レス) id: 602bf9e950 (このIDを非表示/違反報告)
ウォーターツリー(プロフ) - yssy4181yuukaさん» ありがとうございます!こんなありきたりなお話で感動して下さるなんて…(;_;)本当にありがとうございます!! (2020年8月6日 9時) (レス) id: 602bf9e950 (このIDを非表示/違反報告)
yssy4181yuuka(プロフ) - やばい泣いた (2020年8月6日 8時) (レス) id: 2a5f87979c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ウォーターツリー | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/JannethBas1/
作成日時:2020年3月25日 19時