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*理由を。 ページ2

「A、テメェは何で倒れてたァ?」


またしても、私は喋るのをためらう。


脳裏によぎるのは、遠ざかっていく両親の背中と、怪しげな笑みを浮かべて私を見つめる、大人達の影。


思い出すだけで、頭が痛くなる。けど、話さなきゃ。救ってもらった人に失礼だ。


「私は……狙われてる」


実弥は、訝しげに私をじっと見つめた。


「私の親は、借金をしていた。それも、何人もの人に…。
 でもある日、両親は借金を残したまま私を置いて逃げた。知らない…遠い所に」


これからが本題。私がどうしてあんなに逃げ回っていたか、どうしてボロボロだったのか。
すうっと深呼吸をすると、決心をした。


「それから、私の家には借金を巻き上げに来る人が絶えなかった。
 その人たちに連れられて、こき使われたり人形になって殴られたり蹴られたりの毎日。
 痣も沢山出来たし、血だって半端じゃなかった。吐いても次の仕事に追われてた。
 考えられるのは両親のことだけだった」


実弥が、渋い顔をする。その瞳は悲しみで暗く曇っていた。
ああ、知っているんだね貴方は。
きっと、同じようなことを…そんな体験をしているんだね。


あの頃の私と同じ瞳の色をしている。実弥、あなたは。


「憎しみは何でか沸かなかった。そんな気力もなかった。親なんて死んだようなもんだったしね。
 頼れる人も…話し相手も…だれも隣には居なかった。
 これが…理由だよ実弥」


実弥は私を見つめ、苦しそうな顔をした。
今、あなたは何を思い出しているの?何をそんなに…自分を責めているの?


私の頬には、いつの間にか涙が伝っていた。


「A…、腕見せろォ」「っ…、う、うん…」


実弥は私の腕に巻かれた包帯を、器用に解いた。包帯には血がにじんでいて、傷はまた出血していた。
ぎゅっと強く実弥が腕を掴む。


「出血…、これも切られちゃってさ」
「もう、喋んなァA。泣くなァ」
「…うん、分かってる。けどっ…止まないんだよ」


そう、涙も血も止まらない。ねぇ、誰か止めてよ。治してよ、二度と直らないこの傷を。


実弥が私の血をペロリと舐めた。


「俺がァ…止めてやんよォ」


この時の私はまだ分かっていない。実弥とは関わっちゃいけないって。


ねえ、私の前から逃げた方が良い。実弥。


関わっちゃいけない人なんだったんだよ、私達は。

*吐き気が。→←*私の名前は。



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ウォーターツリー(プロフ) - ストロベリームーンさん» 一応消したけど…一応ありがとう(?)笑 ※返信無しで大丈夫です (2020年8月13日 21時) (レス) id: 602bf9e950 (このIDを非表示/違反報告)
ストロベリームーン(プロフ) - ウォーターツリーさん» 一人で寂しく祝ってて悲しいね(*´・ω・)私が盛大に祝ってあげよう!.......かぁぁぁぁぁぁんけぇぇぇぇぇぇぇつぅぅぅぅぅ!おぉぉぉぉぉめぇぇぇぇぇでぇぇぇぇとぉぉぉぉぉぉぉうぅぅぅぅぅ!(遅れてめんご、だって通知来なかったんだもん。...ぴえん) (2020年8月11日 1時) (レス) id: 52d18f6c25 (このIDを非表示/違反報告)
ウォーターツリー(プロフ) - 自分完結おめでとう(何やってんだか) (2020年8月7日 15時) (レス) id: 602bf9e950 (このIDを非表示/違反報告)
ウォーターツリー(プロフ) - yssy4181yuukaさん» ありがとうございます!こんなありきたりなお話で感動して下さるなんて…(;_;)本当にありがとうございます!! (2020年8月6日 9時) (レス) id: 602bf9e950 (このIDを非表示/違反報告)
yssy4181yuuka(プロフ) - やばい泣いた (2020年8月6日 8時) (レス) id: 2a5f87979c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ウォーターツリー | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/JannethBas1/  
作成日時:2020年3月25日 19時

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